巴国(パラグァイ)のオラシオ・カルテス大統領は、ミシェル・テメルブラジル大統領との面談のために日帰りで、21日早朝5時半に、いつも公用に使っている自家用ジェット機で、シルビオ・ペッチロッシ国際空港からブラジリアへ向けて出発した。このカルテス大統領の外遊は、去る7月21日に亜国のメンドサ市で開催された南米南部共同市場(メルコスール)首脳会議の席上で、テメル大統領が正式に伝えた招待に応じたもの。
昨年ジウマ前大統領が弾劾裁判で更迭された結果、後任に副大統領から昇格就任したテメル大統領が同10月3日には早々とパラグァイを訪問したのに対する答礼の意味もあった。
当日、カルテス大統領の公式随行団は、エラディオ・ロイサガ外相を筆頭に、エネルギー政策コディネータ兼閣議チーフのフアン・カルロス・ロペス・モレイラ局長、アルナルド・フランコ大統領府秘書官、ダリオ・フィラルティガ政治顧問官、グスタヴォ・レイテ商工相、それとオスカル・スタルク商業次官の各メンバーで構成された。
今回、ブラジル大統領府プラナルト宮殿で行なわれた首脳会談の日程で、重要な課題の一つは、2023年には期限が切れるイタイプ―双国水力発電所運営協定のアネックス「C」の電力生産及び、サービスコストの条件見直しの交渉を前倒しで、今からとくと始めなければならない緊急問題がお互いにある他に、イタイプ―の債務の完済期限も同時期に控えていると、ブラジル政府のフェルナンド・コエーリョ鉱山エネルギー相は指摘した。
なお、両首脳が会議後に調印した共同声明・コミュニケでは、ブラジルのイニシアティブで、麻薬や武器の国境を越えた組織犯罪による闇取引きの、より一貫した一層の効果的な対策や、それに関わる南米南部地域の各国国境地帯の公安体制強化の協力が強調された。
同じく、人身売買やマネーロンダリング(資金洗浄)の厳重な取り締まりにも触れている。
だが、テメル大統領にして見れば、ブラジルの大きな頭痛の種であるパラグァイからの大仕掛けなタバコ密輸の悩みに付いては、その製造もとが当のカルテス大統領のタバコ会社なのが明らかなためか、明言を避けたのは笑止である。
他方、同コミュニケは最近8月10~11日の両日ブラジリアにおいて開催された、第6回『巴伯麻薬及び関連問題取締合同委員会』の成果を特筆し、同委員会は国際組織犯罪に対抗・協力する両国の適切かつ優先フォーラムとして機能さすべく確認した。
両首脳は、「新提携作戦・Alianza Nueva」の許に、最近国境地帯で成功したマリフアナ栽培の撲滅作業を評価した。
更に、両国は温室効果ガス・GHGの発生で、地球の温暖化による気候変動の対策に技術移転や化学研究をもってする一層の努力、協力を約した。
これ等の他に議題となったのは依然として停滞しているメルコスールとヨーロッパ連合間の通商関係の促進、強化や地域の治安・安全保障の改善及び貿易、投資事業の振興政策等が話し合われた。
テメル大統領は、「ブラジルとパラグァイは常に雇用創出の増進に益すべく、我が国々のビジネス環境の改善を図り、相互の経済近代化に努力するものである」と語った。
なお、「最近のブラジルの景気回復とパラグァイの堅調な経済成長は両国の通商取引の活性化を促している。ちなみに、過去3年間にブラジルの各業種企業が隣国(パラグァイ)に80社も進出し、その投資額は2億ドルにも達しているのは其の良い反映である」と付言した。
次いで、今回のテメルーカルテス会談で避けて通れなかったのは、ベネズエラのマドゥロ政権の問題である。
すなわち、カルテス及びテメル両大統領は、メルコスールのウスアイヤ議定書の民主主義条項に沿って、メルコスールが去る8月5日のサンパウロ会議において決議した、ベネズエラの会員権停止を絶対支持する旨を再確認したものだ。
要するに、マドゥロ政権下のベネズエラが民主政体を取り戻し、惨めにも蹂躙された市民の基本的自由権及び人権が完全に復元される迄は、断固としてベネズエラ国のメルコスール復帰は認めないという厳しい声明である。
このブラジルとパラグァイ両国大統領の共同声明を知ったベネズエラのホルヘ・アレアサ外務大臣は早速反発し、テメルとカルテス各大統領資格の民主的正当性を強硬に疑問視した。
いわく、「カルテス氏とテメル氏の各政権は不人気なクーデターによった、国民が拒否する産物の政府で、仮にも両氏は民主主義の説経をする道徳的人格に欠ける人達である」と、アレアサ外相はツイッターに書き込んだ。