移民文学「うつろ舟」の作者、コロニア小説家の松井太郎さんが1日朝、老衰のため自宅で亡くなった。享年99。
1917年10月25日、兵庫県神戸市出身。1936年に渡伯し、サンパウロ州奥地のカフェザルで一年の労働した。その後マリリア市郊外で綿作りの歩合作に入った。戦後サンパウロ市近郊に移り住み、野菜作りのかたわら執筆活動を始めた。
80年に「うらみ鳥」でパウリスタ文学賞、82年に「アガペイの牧夫」でのうそん小説賞を受賞した。
90年にコロニア文芸賞を受賞した「うつろ舟」は、他3編とともに2010年8月に京都府の図書出版・松籟社から刊行された。同書は「移民文学の一つの到達点」「日本文学の臨界」などと評され、日本の全国紙や地方紙に書評が掲載されるなど、コロニア文学としては異例の注目を浴びた。