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《ブラジル》サッカー=「神業はいらない」と監督は言うが=ブラジルのサッカー・ファンが最もセレソンに呼んでほしい選手とは?

セレソンのチッチ監督(15日の会見で、Lucas Figueiredo/CBF)

セレソンのチッチ監督(15日の会見で、Lucas Figueiredo/CBF)

 15日、ブラジル・サッカー連盟は、来月5日に行われるW杯南米予選の17節と、予選最終となる10日の18節に出場するメンバー24人を発表した。
 セレソンはもう、現時点で2位のウルグアイに勝ち点差10をつけ、独走状態でW杯進出を決めている。チッチ監督も就任以来、10戦で9勝1分と結果を出しており、選手招集の腕前はこの戦績で証明されていると言ってよい。
 だが、それにもかかわらず、ここ数回のチッチ監督の招集でブラジルのサッカー・ファンから不満の声が上がり続けている。それは、あるひとりの人気選手が招集されないからだ。
 ファンの不満は、レギュラーには直接影響がない「第3キーパー」をめぐるもので、待たれている選手の名はヴァンデルレイだ。
 ヴァンデルレイはサントスのレギュラー・キーパーで、現在33歳のベテランだ。過去のキャリアには、国外経験もセレソン選出経験もない。そんなキーパーが、現在共に23歳の若さで、それぞれASローマやマンチェスター・シティでレギュラーとして活躍中のアリソンやエーデルソンよりもむしろ人気が高いというのは、事情を知らない人からすれば不思議なことかもしれない。
 だが、現在、このヴァンデルレイは、「ブラジル一守備のうまいキ―パー」「何度も神業を見せるキーパー」として、その知名度が急上昇している。とりわけ横方向の動きと、相手がシュートを打とうとする際の手前への前進では定評がある。ユーチューブ上ではそうした彼のファイン・セーヴを集めた動画も多く、それが話題を呼んでもいる。
 それほどのプレーヤーがなぜ最近まで騒がれなかったのかというと、それはヴァンデルレイがたどったキャリアの問題がある。彼は2015年のシーズンまで、コリチーバというチームのレギュラー・キーパーだった。このコリチーバは国内リーグの1部のチームではあるのだが、2部降格こそはしないものの、10位台が定位置のチームで、派手な話題のない、いわば脇役的存在のチームだ。ブラジルの場合、サンパウロ、リオ、ベロ・オリゾンテ、ポルト・アレグレを拠点とする、俗に「12強」と呼ばれるチームに所属していないと、注目だにされず、出世コースを歩みにくいというデメリットがある。
 国民がヴァンデルレイに同情するのはそうした側面があるためで、昨年サントスに移籍したことで、やっとスポットがあたりはじめた彼を応援したい気持ちが強い。
 ましてや、第3キーパーを争っているのはカシオ。2012年に日本で行われたクラブ世界選手権で世界一に輝いて以来、常勝のコリンチャンスの守護神を常につとめている点で、評価は十分に高い選手だが、困ったことに、彼はチッチ氏がコリンチャンスの監督時代の愛弟子。「こんなのは絶対にえこひいき以外の何者でもない」とヴァンデルレイ・ファンを怒らせる原因となるのだ。
 チッチ監督は前回、8月の召集の際もヴァンデルレイを呼ばずに彼のファンからの執拗な批判にあったが、それは今回も同じだった。チッチ氏は今回の召集の会見でヴァンデルレイの件に触れ、「神業がほしいわけじゃない。人間としての実績がほしいだけなんだ」と、不選出の理由を説明した。
 だが、ことサッカー観戦にはうるさいブラジルのサッカー・ファン。この説明だけでは黙らないだろう。(15日付UOLサイトなどより)