ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》「ゲイ治療許可」の裁判判断が大問題に=国内外の芸能人たちが大反対運動

《ブラジル》「ゲイ治療許可」の裁判判断が大問題に=国内外の芸能人たちが大反対運動

 ブラジルの首都、ブラジリアの地方裁判所で、同性愛を病気とし、本来の性に戻るべく精神科で治療を施すことを認める判決が出て、国の内外に強い波紋を投げかけている。
 ブラジルでは毎年、世界でも有数の規模のゲイパレードが行われ、ゲイを含む同性愛に対して寛容な見方をする人も多いが、キリスト教の福音派右派などでは、ゲイは病気だから治療が必要という「クーラ・ゲイ(ゲイ治療)」という考え方が古くから存在している。
 だが、1999年に連邦精神学委員会(CFP)が、人権的な立場から、精神科がそのような治療を施すのを禁止する決議書を出して以来、不問とされていた。
 その後、2013年に、同性愛差別主義者で有名なマルコ・フェリシアーノ下院議員(キリスト教社会党)が下院人権委員会委員長に就任し、「クーラ・ゲイ」の法制化に動いたが、同氏への委員長就任反対運動が連日のように議会内で続いたため、同氏が委員長を辞任し、法制化の話も立ち消えになっていた。
 だが15日、連邦直轄区連邦地裁の判事ヴァウデマール・クラウジオ・デ・カルヴァーリョ判事が、「クーラ・ゲイ」を認めさせる訴状を部分的に受け入れ、CFPの99年の決議書は否定しないという見解をとりながらも、「希望者がいた場合、CFPの決議書は法的強制力を持たない」とする判断を下し、物議をかもすこととなった。
 問題の訴状は、民主党(DEM)のソステネス・カヴァルカンテ下院議員の秘書で、精神学者のロザンジェラ・アウヴェス・ジュスチーノ氏から出された。
 同氏はブラジル国内の福音派の大御所宣教師、シラス・マラファイア氏に近い間柄にあるとも言われ、政界と宗教界によるロビー運動があったと見られている。
 ブラジル国内のLGBTの団体はこの判決に対して強い拒否反応を示しており、ブラジル国内の芸能界もそれを強力に支持している。その中でも、男性の同性愛者たちに強いファンベースを持つことで知られる女性歌手のイベッチ・サンガーロやアニッタ、マリリア・メンドンサ、グレッチェン、クラウジア・レイテは、自分たちが持つソーシャルネットサービス(SNS)を使い、すぐに「クーラ・ゲイ」への抗議声明を発表した。
 また、自身も女装するドラッグクイーンの歌手として人気急上昇中のパブロ・ヴィッタールも、「私たちは病気なんかじゃない」と強い口調で猛然と抗議した。
 また、国際デビューもしているアニッタは英文でもメッセージを発表した。それが拡大のもとになったかは定かでないが、アメリカのデミ・ロヴァート、スウェーデンのトーヴ・ローといった世界的な人気歌手たちも「クーラ・ゲイ」に抗議のメッセージを発信している。
 そしてサッカー界からも、ネイマールが19日に自身のインスタグラムにブラジルの人気歌手ルル・サントスの「トーダ・フォルマ・デ・アモール(全ての形の愛)」を紹介。そのあとに自身がそれを歌った動画を貼ることで、「クーラ・ゲイ」に反対するメッセージを送っている。(19日付G1サイトなどより)