国立アマゾン研究所勤務(INPA)の研究、石川ノエミアさん(45、3世)が、8月11日、アマゾン地域のきのこの研究で「労働司法勲章(Comendador)」を受章した。研究当初はまだ研究分野として確立しておらず、日本に渡るなどして第一線で研究を続けてきた。今回、その努力が実を結んだ形だ。
「きのこの研究を諦めなくて本当に良かった」―。電話取材を受けた石川さんは、流暢な日本語で受章の喜びを述べた。だが、91年に石川さんが大学できのこの研究を始めた時には、国内で博士号を取得するのは不可能と考えられていた。
97年に文部科学省の奨学金を受け、北海道大学博士課程で3年半学んだ。「日本はきのこの研究が進んでいて設備も整っていた。ブラジルとは大違い」と話す。博士号を取得し、INPA研究員となった後も、鳥取大学や日本きのこセンターなどと共同で研究を進めてきた。
現在、石川さんの研究対象はアマゾンに生える食用きのこ。アマゾンで存在が確認されている食用きのこ34種類のうち、27種類は石川さんら研究チームが見つけたものだ。特にヤノマミ族常食のきのこは、栽培・商品化が進められており、サンパウロ市内のレストランでも提供されている。
そんな石川さんがきのこに興味を持つきっかけとなったのは祖父の故駒込信夫さんだ。駒込さんは69年に初めてシイタケの菌種を日本からブラジルに持ち込んだ、シイタケ栽培の先駆者の一人だ。石川さんはそんな祖父の影響で、大学進学する頃にきのこの研究者になることを志したという。
石川さんが大学で生物を専攻しきのこに興味があると知ると、信夫さんは大変喜んだとか。「祖父が愛したシイタケを通じて、大切な人たちと出会え、好きな仕事で生活できている。心から感謝しています」と喜びを語った。
だが、名誉ある賞を受章したものの手放しでは喜んでいない。「しっかりした研究施設も資金もないのが現状。知識はあるけれど、指導するだけの準備ができていない。日本と同じように研究できないのが悔しい」と本音を漏らした。
「自分がやってきたことが日本や他の外国で評価されるきっかけになったと思う」と前向きに先を見通した。石川さんにとって今回の受章はひとつの通過点。今後も、きのこ一筋の研究は続く。
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そもそもきのこは植物ではなく菌類の一種。石川さんによると、既に発見されているきのこは2万種以上。菌類全体だと12万種類が発見されているが、まだ見つかってないものも含めると510万種類が存在すると推測されているという。「菌の研究はまだわかっていないことのほうが多い。きのこもほとんどが食べられるかどうかわかっていない」と話す。未知の領域が余りにも広い菌の研究。だからこそ、石川さんは挑戦し続けるのかも。