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《ブラジル》ジャパン・ハウス=変化し続ける空間藝術=名和氏、個展『エスプーマ』開催

青光に照らされた泡の空間藝術

青光に照らされた泡の空間藝術

 細胞が誕生と破壊を繰り返すがごとく変化し続ける現代芸術家名和晃平氏(42、大阪)の個展『ESpuma(泡)』が、先月23日からジャパン・ハウスで開始された。入場無料。来月12日まで。
 様々な素材や技術を用いて、先鋭的彫刻や空間藝術を手掛けることで知られる名和氏は、美術や建築、ファッションなど多分野で活動してきた。
 本展は4年前に発表された作品で、国外での展示は初。青光に照らされた巨大な泡は、生命が誕生した原初を彷彿とさせる異世界が表現された。
 幼少期から、天文学や宇宙工学に惹かれ、生命の神秘に強い関心を抱いてきたという名和氏。そんな同氏が手掛ける藝術作品の根源的なテーマとなっているのが「セル(細胞)」だ。
 「地球は水の惑星。水泡に様々な条件が加わり、生命活動が始まった。環境に適応する形でDNAは進化し続け、その結果、我々の体が細胞で出来ている。そういうことを思いながら見ていくと、なかなかバカに出来ない」と作品に込めた思いを語る。
 大学時代には、祖母の家の台所や風呂場など水が溜められる場所を見つけては、泡の研究に没頭したとも。単なる泡でありながら、感覚、触覚に訴える表現を追及し、そこに哲学的な意味が込められているようだ。
 また、生命の進化から未来への可能性に興味を持ちながら制作に当たっているという。「養分の循環のなかで生命が育まれるのが生態系。太陽光を養分に変換できるのは植物のみ。そう考えると生命全体の中心は植物であるべきた」として自己中心的な人間存在に疑問を呈し、「人間中心ではなくセル中心に考えるべき」と自論を展開した。
 「作品自体は単なる泡。でも細胞の破壊プログラムが機能しているからこそ、丁度よい状態を保っている」と語り、「青い光は美しく見せるだけでなく、動物の攻撃的性格を沈静化する効果もある。それにより植物が主体となり、生命が活性化する。この時代にはこの光が一番いい」として作品に自信を見せた。

 

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 個展開催に併せて、先月23日に講演を行った名和氏。同氏の作品群のなかでも印象的だったのが、「PixCell(ピクセル)」シリーズだ。画素(Pixel)と細胞(Cell)を併せた造語で、「セル」から派生した作品群。その代表作が、見る角度により見え方が異なるガラスビーズで覆われた鹿の剥製だ。インターネットが登場したとき、鹿の画像を見て、「生きているか死んでいるかわからなかった。不気味だった。レンズを通じて世界が飲み込まれていくようだ」と感じたという。「人間の情報欲に塗れ、表層だけしか分からない世界。そこから剥製というリアルなものを取り出し、レンズで覆うことで情報社会を表現した」とか。神道では、鹿は神の使いだとも考えられている。鹿がまるで現代人に何かを伝えているかのような作品に、参加者も感慨深げに耳を傾けていた。