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格付会社S&P=「年金改革待ったなし」とブラジルに警告=改革遅れればさらに格下げも=大統領告発阻止の後に急ぐと政府

エンリケ・メイレレス財相(Wilson Dias/Agência Brasil)

エンリケ・メイレレス財相(Wilson Dias/Agência Brasil)

 【既報関連】11月中の社会保障制度改革(事実上の年金改革)採決を目指し、ブラジル政府内で交渉、調整が続いている。そんな最中、世界3大格付会社の一つのスタンダード&プアーズ(S&P)が、社会保障制度改革が遅れれば、ブラジル国債(ソブリン債)の格下げが起こりうると警告する文書を送ったと、13日付現地紙が報じた。
 政府の経済政策班の間には、このメッセージは、改革に抵抗する勢力にも「社会保障制度改革は待ったなし」だと印象付ける役割を果たすと見る向きもある。
 国際市場は、格付会社が発表する国債信用格付を、その国が国外に向けて発した経済政策公約を遵守しているかどうかを測る目安にしている。S&Pはムーディーズやフィッチより一足早い2015年9月に、ブラジル国債の格付を「投資不適格級」に落とした。
 「我々の目的は、今の政府が、来年の選挙後に発足する政権に少しの財政的猶予を与える、社会保障制度改革を行えるかどうかを見極めること」とS&P分析員のジョイディープ・マクヘルジ氏は語る。
 フィッチもムーディーズも、社会保障制度改革が国際市場におけるブラジルの信用回復にとって重要だとみているが、ブラジルに対するS&Pの見方は、フィッチ、ムーディーズが今週発表したレポートよりも厳しい。
 フィッチのブラジル分析部門責任者、シェリー・シェッティ氏は、11日発表のレポートの中で、「社会保障制度改革の達成は本質的に重要な事柄ではあるが、その行方は不透明だ」と述べ、「来年の大統領選挙も、改革の日程を不確実にする可能性がある要素」とするに止めていた。
 テメル大統領に対する検察の告発受け入れ阻止を巡る攻防のため、社会保障制度改革成立への動きは中断しているが、政府は、告発を阻止したらすぐにでも、その動きを再開させる意向だ。
 11日付本紙でも報じた通り、議員たちの間には、来年の選挙も近く、国民への受けが悪い社会保障制度改革は、より痛みの度合いが緩いものでないと賛成できないという空気が広がっていて、政府内にも、「せめて受給開始年齢、既存システムからの移行措置、必要最低負担年数だけでも通過させよう」とする動きも出ている。
 しかし、経済政策班の中には、それでは国家財政健全化のためには不十分で、課題が次の政権に持ち越されてしまうとして、ギリギリまで、本来の改革案を守るべきとの声も出ている。
 ブラジルのエンリケ・メイレレス財相は12日に、米国で「年内成立の見込みは充分ある。これは議員たちの良識にかかっている」とまで語った。