【既報関連】ブラジルの景気回復を示す指標が出始めており、政府はしきりに「不況は過去の事」とさえ喧伝しているが、それも国内企業が積極的に借り入れを行い、設備投資に動くほどではないと16日付現地紙が報じた。
ブラジル中銀の調べによると、今年8月の法人向け融資は、20カ月連続で国内総生産(GDP)に占める割合を減らしており、2009年以降で最低の水準となった。
今年8月の企業の借入額がGDPに占める割合は、2015年12月の28・45%から6・34%ポイント減の22・21%だった。
これには二つの要因が考えられる。一つ目は、不況に陥る前から有している生産能力を十分に利用するほど回復しておらず、新たな投資を控えているケースで、二つ目は経営悪化で債務不履行に陥ったりして、負債返済のために融資を申し込んでも銀行の審査で拒否されるケースだ。近年は会社更生法の適用を求める例が増え、銀行も融資を差し控える傾向にある。どちらの場合も、資本を回転させるための融資を得る事は困難だ。
「法人向け融資の利用率低下は、景気回復のリズムに直接響く。資本を回転させるための融資を受けられなければ、資材を購入したり、労働者を雇い入れたりする事は出来ないし、工場の新設や新しい機械の導入も不可能だ」と識者は言う。
ブラデスコ銀行のドミンゴス・アブレウ副頭取は、「景気は回復し始めているが、企業が積極的に借り入れを行うまでにはもう少し時間がかかるのが普通だ。多くの企業は不況で需要が減ったため、生産活動が戻り始めても、生産能力には余裕がある」とし、銀行側に融資の準備はあっても、企業の借り入れが拡大しない理由を分析した。
法人の借り入れが伸びないのとは対照的に、昨年10月から、個人向け融資は拡大の一途を辿っている。
現在、個人の借入額がGDPに占める割合はほぼ25%に達している。2007年のこの割合は14%に過ぎなかった。
昨年12月までは、企業の借り入れ総額は常に個人の借り入れ総額を上回っていた。しかしながら、今年に入ってからは両者の関係が逆転し、その差は広がるばかりだ。今年8月の国内総クレジット融資に占める個人向け融資の割合は52・84%で、法人向け融資は47・16%だった。
個人も、法人も、債務不履行状態は、各々、6100万件と510万件で最悪の状態だが、個人は既にその数が減り始めているのに、法人の状態はずっと芳しくない。
投資顧問会社。XPインヴェスチメントス社の主席エコノミストのゼイナ・ラチフ氏は、「不況で法人向けの融資枠が狭まり、融資の利用や認可が遅れている事が経済の回復に影響する事は明らかだ。法人向けの融資が戻ってこないと、雇用回復のペースも遅れる」と語っている。