【既報関連】ブラジル連邦政府は16日、労働者を過酷な条件下で働かせる奴隷労働の摘発、雇用主への罰則適用のための基準を改定したと17日付現地各紙が報じた。
今後は労働相だけが、こうした違法な労働を強いている雇用主を奴隷労働ブラックリストに載せる権限を持つ。同リストに掲載された企業は2年間、公的銀行からの融資を受ける事が出来ない。
新基準では奴隷労働の証明や懲罰が難しくなる他、監査・摘発の方法も変更された。また、ブラックリスト公開は労働相だけに認められ、年2回に限定された。従来の基準では、リスト公開は労働省の監査官が行っていた。
農牧畜業者らを支持基盤に持つ議員団体、農牧畜系議員前線(FPA)は書面で、「改定は我々が望んでいた通りの形で行われた」と発表した。
奴隷労働撲滅計画は1995年に導入された。今回の基準改正での最大の変更点は、国連が定める「奴隷労働は労働者がそれを訴え出なくても認められる」という基準に反する事だ。改定前は、労働者本人が「食料だけ貰えれば良い」と了承していても、雇用者が奴隷労働で処罰される例が頻繁に見られた。
労働省の監査官は今後、常に警察同伴が義務付けられ、調書の発行は警官の任務となる。内陸部では、雇用者やその支持を受ける政治家の力を恐れ、警察が奴隷労働の監査に付き添ったり、調書を作ったりする事に二の足を踏むのではないかと懸念されている。
奴隷労働は「長すぎる就労時間」「強制労働」「劣悪な労働環境」「負債故の無賃または低賃金労働」などを指し、このような条件で働かせた雇用者には2~8年の禁固刑が科されていた。改定法案では、労働者が訴え出た上で調書が書かれないと立件もされないし、「自由の制限を伴う」事が条件に加えられた。
労働検察局(MPT)は、政府は奴隷労働を強いている企業を手助けしたと非難しており、奴隷労働撲滅課コーディネーターのチアゴ・カヴァウカンチ氏も、新基準はブラジルの法律にもブラジルが国際社会と結んだ約束にも反していると語っている。
奴隷労働監査部主任のアンドレ・ロストン氏は先週、ブラックリストの見直しを終えた直後に解任された。6日に見直されたばかりのリストの公開はFPA所属議員らの反発が予想されていた。
奴隷労働関連の基準改定は、テメル大統領への告発受け入れを巡る駆け引きの最中に行われ、リスト見直しなどに不満を持つ議員たちへの懐柔策と見る野党議員も多い。FAPは以前からの懸案というが、持続ネット(Rede)のアレッサンドロ・モロン下議は「大統領は度を越している。自分に対する告発受け入れを阻止するために、奴隷労働規定の緩和を認めるなんて、スキャンダラスの一言だ」と語った。