サンパウロ木蔭俳句会主催、朝蔭発行所後援で、『第39回念腹忌、第29回潔子忌、並びに第7回牛童子忌全伯俳句大会』が、15日、熟年クラブ連合会会館にて開催された。南麻州やサンパウロ州奥地など遠路から念腹師、潔子夫人、牛童子師を追慕する直弟子、孫弟子ら40人近くが参加し、俳句三昧の一日を楽しんだ。
夏時間初日となった15日午前10時から開始となった今大会。凛とした黄菊で飾られた祭壇に念腹師、潔子夫人、牛童子師の遺影が並べられ、出席者らは一分間の黙祷を捧げた。
続いて大会挨拶に立った吉田しのぶさんは、「年々俳句愛好者が少なくなっている。先生の直弟子は何人ほどか。数えられるほどしかいない」と寂しさを滲ませた。
一方で「創刊号より数え木陰朝陰通巻825号に達した。これは一重に亡き念腹先生の遺志を継がれた牛童子先生、そして、それを継がれた佐藤寿和先生の弛まざる努力の賜物」と称え、「来年は移民110周年。弛まなく受継がれてきた歴史を次の世代にバトンタッチしていく責務がある」と語った。
その後、佐藤寿和先生も「今日は念腹先生はじめ先没句友を偲び、ともに出席したくても叶わなかった皆様のことを思い、心を一つにして俳句三昧の一日を楽しみましょう」と挨拶した。
席題は、念腹忌、潔子忌、牛童子忌、会場嘱目、当季雑詠(春季一切)が発表された。一般は5句投句5句選、代表選者は5句投句6句選、一般もその内特選一句と発表された。投句、清書を済ませた後に選句に移り、句友同士で交流を深め、昼食に舌鼓した。
その後、午後一時半過ぎから披講が行われ、席題互選の総合点で一位に輝いた児玉和代さん(84、高知)、二位の鈴木文子さん(70、栃木)、三位の吉田しのぶ(82、広島)に記念カップ、十位までに各々景品が配られた。
一位となった児玉さんの一句は「又の日の無き別れかもジャカランダ」。ジャカランダは、10月頃に紫の花を咲かせる低高木。「紫の花がどこか寂しげで、その木の下で友人とお別れしたことがある」とも。「また来年に花が咲く頃、会えるだろうか」との一縷の期待が込められた。
二位となった鈴木さんの一句は「百一才気概の参加念腹忌」。念腹師の直弟子で、生前親交が深かったという同大会の最高齢者である栃沢秋穂さんを称えた一句。選者を務めてきた栃沢さんは、今大会を最後に引退。実娘に付き添われ、101才で参加した栃沢さんの気概に、句友らも胸を熱くしたようだ。
三位となった吉田さんの一句は「途絶へ行く恩師の直弟子念腹忌」。大会挨拶と相俟って、俳句愛好者が減っていくことへの憂慮と共に、次世代へ引継いでゆくという覚悟が窺える一句だ。(大会記や他の作品は文芸欄で詳報)