【既報関連】ブラジル連邦政府は16日、労働者を過酷な条件下で働かせる、いわゆる「奴隷労働」の定義や、摘発ならびに、雇用主をブラックリストに載せたり、罰則を適用したりする基準を改定したが、その事が国内外からの批判を招き、ブラジルからの産品輸出に悪影響を与える可能性さえあると、19日付現地紙各紙が報じた。
欧州連合(EU)議会のフィンランド人議員ハイジ・ハウターラ氏は、「我々は、奴隷的環境で働かされた労働者が生産した商品の輸入を容認できない。ブラジル政府の決定は、今後のEUと南米南部共同市場(メルコスール)間の自由貿易協定締結交渉の障害になり得る」とした。
EUとメルコスール間の自由貿易協定は、何年間も合意に至らずにいるが、協定の草稿文の中には「奴隷労働の根絶」という項目もある。EU議会はこの問題を重く見ており、昨年10月には奴隷労働の定義の厳格化を要請してもいる。欧州への輸出には、その品が奴隷労働で作られたものではないという証明も含めた品質保証書が必要だ。
「ブラジルが奴隷労働摘発基準を事実上緩和した事で、EUは対抗措置をとるか」との質問に、EU側は返答を避けたが、EU側交渉団は、労働者の基本的な権利の保護は貿易政策にとって本質的な事項とみなしている。
EUは、ブラジルからの輸出全体の15%を引き受ける大市場だ。EU向けの商品の半分は原材料(コモディティ製品)で、多くの製品が、過去に奴隷労働の疑いをかけられている。
ブラジル貿易会(AEB)のジョゼ・デ・カストロ会長は、今回の政府の決定が輸出業にどのような影響を及ぼすかを測るには未だ早いとしている。
一方、ブラジルでは、奴隷労働の基準や監査方法が事実上緩和される前の昨年から、奴隷労働の摘発が大幅に減少している。当局の摘発によって劣悪な労働環境から救い出された労働者の数は、2010年が年間9925人だったのに対し、今年は9カ月間でわずか73人のみだ。
奴隷労働そのものが少なくなった事も摘発減少の理由ではあるが、予算不足で、監査の頻度が下がった事の影響はもっと大きい。2012年までは、奴隷労働監査のために毎年400万レアル以上の予算が割かれていたが、13年に政府がそれを1割以下に削減。以来、予算額は公表さえされていない。
労働監査系職員団体は19日、ブラジリアに集結し、奴隷労働に対抗、また労働監査への法的、行政的支援の減少に抗議するストライキ実施について話し合った。
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