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サンパウロ市長=「貧しい人は食べられるだけで幸せ」=食事の質軽視のドリア氏にダメージか

ドリア市長(@Jdoriajr)

ドリア市長(@Jdoriajr)

 1月に就任以来、高い支持率を誇り、一躍、来年の大統領候補にも躍り出ている富豪のジョアン・ドリア・サンパウロ市長が、「ある食べ物」と、貧困者の食生活についての見解をめぐり、大きなダメージを受けかねない事態となっている。

 ドリア市長が執着していた「ある食べ物」とは、賞味期限が切れる直前の食材を粒状に加工した、「ファリナータ」または「グラヌラーダ」と呼ばれるものだ。

 ファリナータ自体は、各種の食材が無駄になるのを防ぎ、食に窮する人たちにも供給できるという、経済的、環境的、社会的な理由で開発されたもので、ブラジル国内でも多くの大学や研究機関がその開発に取り組んでいる。ファリナータは、その他の食材と組み合わせ、パンやケーキなどを作ることも出来る。

 ドリア市長は当初、このファリナータを小さな子供のいる低所得世帯の補助食材として使う意向を表明していたが、18日には、市の教育局の意向も確認せず、市立の公立校の給食の食材にも使用すると発表したため、市民や栄養士、検察からも強い反発や批判などを浴びることになった。

 ドリア市長が給食に使用すると発表したファリナータは、栄養価や使用法についての評価がされておらず、市長が言う給食用の食材というアイデアについても、教育省が定めた新食材の導入基準に沿うか否かの試験などが行われていない。

 このため、市民たちからは、賞味期限が厳守された素材で作られているか、市が製造を依頼する工場の衛生管理や栄養価は適切かなど、様々な疑問の声が上がっている。

 ファリナータの給食導入は、18日にサンパウロ市内で発表された。発表会見には、カトリック教会サンパウロ教区のオジロ大司教も並んで参加し、ファリナータは社会的な活動にも利用されていると弁護した。

 ドリア市長はこの席でファリナータを給食に加える理由を聞かれ、「貧しい人たちにはきちんと食事をする習慣がない。なければ、おなかがすかないようにするのみだ」と答えた。

 この回答に対し、「飢えさえ満たされれば、食べ物の質はどうでも良いのか」といった批判の声がマスコミやソーシャル・ネットワーク・サービスであがった。

 タイミングの悪いことに、ネット上ではドリア氏が企業家だった2011年、かのドナルド・トランプ・アメリカ大統領が出演して有名になった番組のブラジル版「オ・アプレンティズ」のある一場面が繰り返し流されていた。

 それはドリア氏が、自身の企業に求める社員を選ぼうと挑戦者をひとりずつ脱落させていた際、ある挑戦者が「将来は、貧しい人たちに食事のマナーを教えるプログラムを行ないたい」と語ったときだった。

 そのときドリア氏は「食事のマナー? そんなもの、あると思うのか? いいか、貧しい人たちというのは、食べ物にありつけるだけでも神に感謝のレベルなんだぞ」と冷たく言い切っている。この挑戦者はこの放送からまもなく脱落している。

 会見では記者団から、この放送についての質問も飛んだが、「そんなことは覚えていない」と答えるだけだった。

 だが、このビデオは、急進左派政党で知られる社会自由党(PSOL)の市会議員のサミア・ボンフィン氏が繰り返し流しており、ドリア氏への強い抗議運動として発展させている。

 ドリア市長は、中央政治の混乱から、新人政治家でありながら「すぐにでも大統領候補か」と呼ばれ、高い好感度をもたれていた。

 だが、自身の売り込みキャンペーンで国内外に頻繁に出かけたり、政治家としての後見役となった恩人でもあるジェラウド・アウキミン・サンパウロ州知事をさしおいて民主社会党(PSDB)の大統領候補になろうとしているとして党内から批判の声が上がっている。さらに、出馬のために声のかかった政党へ移籍するための離党も辞さない態度で好感度を下げていた矢先でもあった。

 19日、こうした不評を受け、ドリア市長はファリナータの導入を断念した。