オブセルヴァトリオ・ド・クリマ(OC、地球温暖化などを研究する民間機関)が25日、16年のブラジルの地球温暖化ガス排出量は世界7位の22億7800万トン(二酸化炭素換算)で、前年比8・9%増えたと発表したと同日付現地紙サイトが報じた。
同機関によると、この量は2008年以降で最大で、増加率も2004年以来の高率だという。
ブラジルの温暖化ガス排出量は2015、16年と2年連続で増え、その累積は12・3%に及ぶ。一方、この間の国内総生産は7・4%ポイント縮小しており、ブラジルは世界の経済大国中、唯一、経済活動に益せず、大気を汚した国となった。
ブラジルの温暖化ガス排出量を押し上げた最大の要因は、法定アマゾンの森林伐採が27%増えた事だ。森林伐採を含む土地の用途変更に伴う温暖化ガス排出量は23%増えており、全排出量の51%を占めた。
土地の用途以外の部門のガス排出量は2・8%減った。
最も減ったのはエネルギー部門の7・3%だ。この部門のガス排出量減少は、経済活動の低下で電力消費が減った事や、水力発電所のダム貯水量が豊富で、火力発電所の稼働率が抑えられた事が主な要因だが、風力発電が55%増えた事やバイオマス発電が増えた事も影響している。工業部門のガス排出量は、活動低下などで5・9%減、排気ガスなどの残留物も0・7%減少した。
他方、農牧業ではガス排出量が1・7%増えた。同部門のガス排出量は家畜の飼育や肥料用の窒素酸化物使用などの直接要因によるもので、土地の用途変更などの間接要因も含めた場合の排出量は16億トンに及ぶ。
この量はブラジルの温暖化ガス排出量の77%を占め、農業部門だけで世界8位の汚染国となった。なお、農業部門のガス排出量は日本の総排出量を上回っている。
農業部門のガス排出量を押し上げたのは、家畜の数の増加だ。経済活動の低下で失業率が上昇した事で、国民の所得や購買力が低下し、家畜の屠殺数が減ったため、牛の飼育数は2億頭近くに達し、メタンガスの放出量が増えたという。
ブラジルはパリ協定を批准しており、2009年に2020年までに温暖化ガスの排出量を削減すると約束したが、現時点ではまだまだ、削減努力が不足しているようだ。