国家高等教育試験(Enem)初日が5日にブラジル全土で行われたと、6日付現地紙各紙が報じた。
高校卒業年またはそれ以降の生徒を対象とするEnemは、2日間かけて行われる試験だ。これまでは土日に行われていたが、今年は2週連続の日曜日開催となった。初日の科目はポルトガル語と外国語、人文科学、小論文、2日目は数学と自然科学だ。
小論文は、試験直前に国内で大きな物議を醸す決定が司法により下された。
「表現の自由」を理由に、教育団体「党派色のない学校」が訴えていた「人権を尊重していない内容の小論文も零点としてはならない」との主張が通り、10月25日に第一地域裁(Tribunal Regional Federal)が人権を侵害したり無視したりする内容の小論文を零点にするのを禁じ、最高裁も5日にそれを支持したのだ。
過去19回のEnemの小論文において、11回は人権に関連するテーマが出題されていたが、今年のテーマも「ブラジルにおける聴覚障害者教育の課題について」だった。今年は初めて、手話付のビデオが用意され、聴覚障害者にはビデオの利用が認められた。
受験した聴覚障害者のカイッケ・カルヴァーリョ君(18)は、「聴覚障害者は無理解から学校でいじめに遭うことも多い。でも、僕たちもみんなと同様に、学ぶ力を持っている。今回の小論文のテーマに選ばれたことで、障害者への理解が広がって、聴覚障害者が社会に参加できる機会がもっと増えれば良い」と語った。
多くの受験者にとってこのテーマは予想外で、「性的多様性のことが出るだろうと思っていたのに」(ブレンダ・ノローニャさん・17)、「何とかなったと思う。企業が、聴覚障害者への道を開くための投資より利益を優先していると書いた」(ペドロ・ゴンザーガ君・18)、「難しすぎてお手上げ、何も書かずパスした」(ジョルジ・アラン君・19)など、対応も様々だった。
試験翌日の6日、メンドンサ・フィーリョ教育相は「聴覚障害者を尊重する形のより包括的な政策を立てるため、障害者教育に適した教師育成も国家の教育政策に含まれている」と語った。