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過去最多の2万5千人来場=伝統のレジストロ灯篭流し=新史料館の建設着工式も

夜空に咲いた打上げ花火

夜空に咲いた打上げ花火

大盛況となった盆踊り

大盛況となった盆踊り

 レジストロ日伯文化協会と日蓮宗恵明寺の共催による「第63回レジストロ灯篭流し」が、1、2の両日、サンパウロ州南部リベイラ河畔のベイラ・リオ広場で開催された。2日間とも晴天に恵まれ、例年より多い2万5千人以上の来場客が押し寄せた。レジストロ市人口は5万6千人。その半分ちかい人数が、暗闇のリベイラ河の川面に幻想的に浮び上がった1500基の灯籠に先祖への思いを馳せた。

 

 1955年、同河で溺死した邦人旅行者の供養のため、日蓮宗身延山南米別院の石本恵明師と同市在住の日蓮信者である春日文蔵氏により、水難犠牲者を偲び、灯篭七基を流したことをきっかけに始まった灯篭流し。

新史料館の署名式に臨んだ関係者

新史料館の署名式に臨んだ関係者

 その後、両氏の働きかけで同市から無償譲渡された土地に慰霊碑を建立。以来、細々と続けられていた。入植80周年を機に発足した同文協の参画により、規模は拡大。多宗教の合同供養として行なわれるようになり、現在の形となった。

 2日午後6時、日蓮宗恵明寺の石本妙豊導師により慰霊碑の前で執り行われた「世界平和祈願と先没者慰霊法要」。佐久川マリオ同文協副会長、ジウソン・ファンチン同市長、野口泰在聖総領事、サミュエル・モレイラ・ダ・シウバ連邦下議、リペイラ河沿岸日系団体連合会の山村敏明会長らが出席した。

 法要には、レジストロ本願寺や生長の家、カトリック教会などの他宗教団体代表者らも参列。熱心に合掌するブラジル人の姿も多く見られ、参列者は宗派を越えて先祖に祈りを捧げた。

 その後、新史料館の建設着工にあたって署名式が行われた。昨年、SESCレジストロ開設にあたり、移民史料館として活用されていた海外興業株式会社(KKKK)の精米所と倉庫群だった建物から移転を余儀なくされていた。サンパウロ州と同市からおよそ150万レアルの負担を得て、18カ月後に完成を見込む。

 式典後、辺りが闇に包まれると川面に無数のほのかな灯篭の光が浮かび上り、ゆっくりと川下に流れてゆくその先をじっと見つめる人や、川岸まで下りて見物する来場客で埋め尽くされた。

 一方、広場では日本食の屋台が軒を連ね、混雑で通行が困難になるほど。主要舞台ではリベイラ涼風太鼓による圧巻の演奏に始まり、終盤には盆踊りや若手の活気溢れるマツリダンスで熱気を帯び、夜更けるまで祭の余韻に浸った。

 サンパウロ市からツアーで初めて灯篭流しに参加したという久保泰廣さん(75、鹿児島県)は、「ゆるりと流れてゆく灯篭を見つめ、亡くなった妻や両親をだいぶ弔うことができた。しみじみと思い出し、味のある灯篭流しだった」と感慨深げに語った。

 同文協は今回、SESCによる展示やワークショップ、打上げ花火の改良、灯篭の注文簡素化を図る同祭専用サイトの立上げなどにも力を入れてきた。

 佐久川副会長は「非常に素晴らしい祭となった」と手応えを語り、「これまでで最大の入場者数だったのでは。移民110周年を迎える来年は灯篭流しを記念事業と位置づけて、特別な祭典になるよう一致団結してやっていきたい」と見通した。

 

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    ◎

 ヴァーレ・ド・リベイラ地域32市に先駆けて、サンパウロ州の観光振興都市(Municipio de interesse turistico)に認定されたレジストロ。2年前から同市観光委員会を立上げて認定取得に向けて取組んできた清水ルーベンス委員長によれば、これにより観光振興予算として毎年65万レアルの助成金が拠出される。同州観光地区(Estancia turistica)に格上げされれば、年間200万レとなるという。これまで市内各地の潜在的観光地選定や、観光ガイド養成のための機関設立にもあたってきた。かつて「紅茶の都」として栄えた同地の茶園や歴史ある建造物を巡るツアーや、森林農法導入などによって、村おこしに繋げていきたい意気込みだ。清水委員長は「市は観光振興に乗り出したばかりで、これからがスタート。気合を入れてやっていきたい」と見据えた。