4日目の9月20日晩、北部の主要都市ポルトへ到着。リスボンから北へ314キロ。名前がポルト(港)だから、海沿いの港町かと思ったら、ドゥエロ川沿いに4キロほどの海からさかのぼった地点にあった。
現地ガイドに聞くと「この辺は水深が10メートルしかないから大型船は停泊できない。もう一つ先に本格的な港のある町がある。2000年前、ローマ人が『ポルトス』と呼んでいたからポルトになったと言われている」。はやり原点はローマ帝国だ。
一行が夕食を食べる海鮮レストランには、隣のガイア市に住む岡井吉重さん(77、青森県)が顔を出した。彼は南米産業開発青年隊10期生で、一行には同8期の小山徳さん(78、長野県)がいたため、あらかじめ示し合わせていた。
岡井さんはブラジルにおける指圧師のパイオニアで、リオで成功した後、ポルトガルに渡った変り種だ。「EUに入ったらポルトガルは発展する。そう先読みして1987年1月4日にポルトへ転住した。それから永住権を取るまでに5年もかかった。アンゴラとか旧植民地からの移民が多くて、永住権申請が山のように出ているから遅れた。取れた時は本当に嬉しかった」。
「ブラジルでもたくさん弟子を育てたけど、ポルトガルでも僕は〃指圧の父〃だよ」と笑う。「40年前は、グローボTV局の俳優とかよく来ていたね。グロリア・ピーレス、クリチアネ・トロニ、デニス・カルヴァーリョとかね」と有名俳優や演出家の名前がスラスラと名前が出てくる。「特にデニスが僕のことを気に入ってくれ、彼が監督したノヴェーラにも指圧師役で2、3本出演しているよ」とも。
「こちらに来た当時、トヨタや繊維会社の駐在員など日本人50家族ぐらいいたかな。忘年会には100人ぐらいきた」。転住の理由を尋ねると、「EUになるからドイツ、フランスにも行き来でき、指圧も広められると思った」。
岡井さんは、ブラジルとの共通点として「ポルトガル時間がある」という。「20、30分遅れるのは当たり前。ひどい場合は1時間遅れ。ブラジルのはここからきているんだと思ったよ」。さらに「家族中心。例えば会社で残業することになったら、まず奥さんに許可をもらう電話をする」と笑った。
岡井さんは「ポルトガルはEUを出た方が良い」と考えている。「だってドイツだけ儲かっている感じだよ。みんなドイツの言いなりだ。たしかにEUから借金して高速道路は良くなって、観光客はどんどん入って来る。でも域内の関税禁止だから、機械産業とかドイツ勢にみんなやられちゃって国内産業が育たない。もっと国内産業を保護しないと雇用が増えない」と問題点を挙げた。(つづく、深沢正雪記者)
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