暁秀高校のメンバーは日本人の花井玲美さん(れみ)、中尾亮太さん、インド出身で3歳の時に来日したムジュムダル・デワヤニさん、カナダ人の父と日本人の母を持つトーン・アリーシャさんの4人。
国際色豊かなチームに、「移民」のテーマについて聞いてみた。
中尾さんは、「自分も海外に住んでいたし、学校がこのような環境ですから、テーマを知ったとき受け入れるべきだと思いました。でもディベートをするにあたって、移民と難民の違いや何を移民というのかなどを考えました」と話した。
また、浜松北高校のチームにも「移民政策を緩和させるべき」というテーマを知ったときの意見と今では意見が変わったかと投げかけると、メンバーのひとりの男子は、「もともといいイメージがなかったので、否定側に有利なテーマだと思いました」と率直な感想を述べた。
しかし、自分たちで肯定と否定の主張を考えて資料を読み込む中で、「悪いイメージはテレビのニュースの影響が強かったと思った」という。
一方、小学校に日系ブラジル人が多かったというメンバーの女子は「もともと悪い印象もなかったし、外国人を助けたり、助けてもらったりすることが普通になってほしいから、心の中ではいつも肯定の立場でした」と話した。
移民というテーマを議論する中では、社会保障・治安・労働力・経済・人権・AI(人工知能)・コスト・国際比較など様々な難しいキーワードが当たり前に飛び交い、その知識や考察が必要とされていた。
限られた主張の数と時間、勝負を決めなくてはいけない「試合」とあって、本来の移民の是非の議論とは目的は違うかもしれない。だが、高校生がここまで調査と議論を深めることはとても意義のあることだ。
このテーマでこの高校生と英語で戦える日本の大人はどのくらいいるだろうか。
英語ディベートの普及は、日本の教育現場の「受ける授業」から「考えて主張する学び」へ、さらには「日本人が様々な国でその国の人間と共に何かをする」ことを具体的に想像する良い機会を提供している。
全国大会は12月16日、17日に埼玉県で行われる。静岡県からは県大会を優勝した加藤学園暁秀高校と準優勝した三島北高校が出場する。
英語教育の関係者だけではなく小中学校の教員や地方自治体の関係者にも注目してもらいたいところだ。(終わり、秋山郁美通信員)
□大耳小耳□関連コラム
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英語には縁のないブラジルの日本移民でも、ポルトガル語を使って質問、抗議、議論することは日常的だ。たとえうまく表現できないとしても、ある程度の抗議や質問ができなくては生活すら送れない。日本語で表現するような多様な言い回しはムリだし、微妙なニュアンスを込めることも不可能。でも、伝えるべき内容は言う必要がある。日本で英語のディベートが出来る高校生は、ある意味、エリートかもしれない。だが、移民にとって外国語は日常的な「道具」だ。子や孫などポ語を母語とする二世以降の世代と話すときもそう。家庭内でも日常的に起きる環境でもある。問題は、その「道具」を使って何を表現するか。むしろ移民が頭を悩ましてきたのは、「どんな日本文化を子孫に伝えるか」という内容の問題ではないか。