ブラジル連邦政府は16日、今年末で期限が切れる国内自動車産業活性化計画、Inovar―Autoに代わり、来年から導入される予定だったRota2030の実施を、南米共同市場(メルコスール)と欧州連合(EU)との間で進行している通商交渉の締結まで先送りする意向を示したと、17日付現地紙が報じた。
今年12月31日に期限切れとなるInovar―Autoは、国産車と輸入車の間で工業製品税(IPI)の税率に差を付けたり、国内製造車でも国産部品を一定の割合以上使用しなければIPIの税率を引き上げたりしている。
EUや日本は同計画導入直後から、この政策は国内産業保護政策で、国際的に禁じられている保護貿易に当たるとして、世界貿易機構(WTO)に訴えていた。WTOは8月にEUなどの言い分を認め、ブラジルに制裁を課した。
これを受け、立案されたのがRota2030だ。同計画では、国産車と輸入車に課すIPIを一律10%ポイント上げた上、燃費や安全性の高さ、調査・開発のための投資といった基準を満たした企業には、最大10年間、IPI減額を認める予定だ。
ただ、それでは、ブラジル国内に生産拠点や研究施設を持たない国外企業は、IPI減額のための諸条件を満たす事が出来ず、国内での自動車販売において、ブラジル企業との競争で不利益をうけるため、EUとの新たな火種となりかねない。
ブラジル政府が懸念するのもこの点で、Rota2030はInovar―Autoの焼き直しと解釈されれば、メルコスールとEUの通商交渉を阻害する要因になりかねないとみる関係者もいる。
ミシェル・テメル大統領(民主運動党・PMDB)は、17年にわたるメルコスール/EU間の通商交渉を早期に終わらせ、自政権での自由貿易協定締結を望んでいる。このため、障害となりかねないRota2030の導入は、協定締結後に先送りしたいのが本音だ。
だが、国内自動車業界は、Inovar―Autoの期限が切れる今年末までにRota2030を制定する事を望んでいる。業界はInovar―Autoで行われていた、政府による15億レアルに及ぶ調査研究費補助継続も求めており、IPI減額を条件に、企業に調査費を負担させる案に反発している。
自動車業界の代表者たちは、14日にテメル大統領、メイレレス財相、マルコス・ペレイラ開発商工貿易相と会合を持った。だが、Rota2030の実施を求める業者側と、来年からの実施を確約は出来ないとする政府側の隔たりは埋まらなかった。
アントニオ・メガーレ全国自動車工業会(Anfavea)会長は、「サッカーボールはPKを蹴るための位置にセットされている。後は大統領がシュートするだけ」として、Rota2030の早期実施を迫ったが、テメル大統領は「まだキーパーがいる」と語り、Rota2030に反対し、18年予算に組み込んでいない財相の存在を暗喩したという。