日本酒の試飲イベントが20日、サンパウロ市のインターコンチネンタルホテルで開催された。日本酒店「アデガ・デ・サケ」(飯田龍也アレシャンドレ代表取締役)と商社ARUKIの共催。福島、新潟、岐阜、兵庫、広島、佐賀から、8軒の酒蔵が初めて一堂に会して出品し、来場者に自慢の日本酒を紹介した。
JETROサンパウロ事務所によると、日本酒は輸入品目「発酵酒」の大半を占める。この品目の輸入量は2006年が約12万1千キログラム、16年が約22万8千キロと10年で2倍近くに(ブラジル商工サービス省調査)。当地でも人気を増している。
08年頃からカクテル「カイピリーニャ」のカシャッサの代わりに酒を使う「サケピリーニャ」が流行し、知名度が一気に高まった。ただし、本来の酒の味わい方とはほど遠く、当地の日本酒愛好家からは「正しい呑み方の普及を」との懸念が高まっていた。
輸入日本酒が増えるにつれ、徐々に正しい味わい方を広める必要性が増した。その役割を担った一人が、中南米初の「酒サムライ」に15年に叙任された飯田さんだ。
飯田さんのモットーは「百聞は一杯にしかず」。今回のイベント開催意義もそこにある。今までもセミナーなどで来場者に少量を飲んでもらうことはあったが、日本各地から取り揃えて試飲会を開催するのは初めて。「ここ数年で日本酒の人気が高まるだけでなく、ストレートでゆっくり飲む、正しい呑み方が浸透してきた」と話す。
来場した日本料理店関係者から、試飲した日本酒をさっそく店頭で扱いたいという要望があったり、イベントの様子がSNSで拡散されたりして盛況となった。飯田さんは「第1回目としては大成功。今後も年に1回ほどのペースで継続的に開催したい」と展望した。
佐賀県伊万里市の古伊万里酒造は、ブラジルで初めて自社製品を紹介。前田悟専務取締役は「今回は反応を見たかった。将来的にレストランで扱ってもらえるようになれば」と意気込んだ。
佐賀県小城市の天山酒造の商品は先月、仏パリで開催された日本酒のコンクールで最優秀賞を獲得。七田謙介代表取締役社長は「日本酒はフランス料理など様々な国の料理に合う。ブラジルならシュハスコには強い味の日本酒を選んで楽しんでほしい」と話した。
来場した非日系人タニタ・ベンデルさんは「日本酒はすごく好き」と話す一方、「日本料理以外を食べるときに、日本酒を飲む習慣が根付くにはまだ時間がかかる。もっと日本酒について学ぶ必要があるわ」との考え。
700種の日本酒を飲んだという駐在員の40代男性は「今回試飲した日本酒はどれも美味しい。ブラジルで日本酒を飲むことは諦めていたので、こうやって飲めるのは嬉しい」と頬を赤く染めながら笑顔で話した。
試飲会に並んだ日本酒は来年2月以降に「アデガ・デ・サケ」(Alameda dos Nhambiquaras, 1089, Indianopolis)で買うことができる。
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日本酒店「アデガ・デ・サケ」はブラジル初の専門店。オーナーの飯田さんによると日本酒が当地で認知されだしたのは2008年頃。カシャッサの代わりに日本酒を使った「サケピリーニャ」が流行りだしたときだ。ただし、飯田さんはその流行には乗らなかった。「急に人気が出たものは、少したつと急に人気が無くなってしまう。ゆっくり定着させることが大切」と話す。飯田さんの理想は、元気を出したいときは超辛口、幸せな気分の時ときはフルーティーなものなどと気持ちに合った日本酒を楽しんでもらうことだという。