ブラジルで今年4月に上院を通過し、5月に裁可、21日から施行されている新移民法が、国内で営業する多国籍企業の幹部社員の異動や就任などの動きを妨げていると、29日付現地紙が報じた。
新移民法は、裁可から施行までに180日の猶予があったが、運用規範となる適用法令が出されたのは、施行当日の11月21日だった。適用法令が出されるのが遅かった上に、ビザ発給に関する条文はいくつもの点が不明瞭なままだ。
ブラジル国外から連れてきた社員を国内ポストに就けることが多い多国籍企業では、労働省、連警、領事館などでビザ発給手続きに関する定義が統一されていないためにビザを受け取れず、ブラジルへの社員派遣が滞っている。
移民関連手続き専門の法律事務所フラゴメン・ブラジルの共同経営者で弁護士のジアナ・キンタス氏は、「適用法令は、施行と同時に出された。これでは関係各局が新移民法の運用に慣れる時間もない」と語る。
適用法令の条文には、「労働省関連部局の国家移民審議会(CNI)と今後詰めなくてはならない箇所がある」と認めている部分さえある。
労働省のホームページで、外国人がブラジルに入って就労するための手続きを行うと、新移民法施行のため、就労ビザ取得手続きは細部の法的調整を待つ必要性があるとする通知文が出てくる。
移民関連専門の法律事務所Emdocのレネ・ラモス弁護士は、ビザ発給要請に答えられない状態は、国外の幹部社員をブラジル勤務に就けようとしている全ての企業に混乱を生じさせているという。
一般消費財製造販売の国際企業ユニリーバで駐在員のアメリカ大陸諸国間移動オペレーションを担当するパトリシア・タヴァレス氏は、同社のブラジル法人幹部として招聘するメキシコ人と米国人のビザ取得手続きが差し止められ、いつになったらこの問題が解決するかさえ予想できず、頭を抱え込んでいる。「2人共、1月からブラジル勤務と決まっているのに、ビザ発給や勤務開始の時期すら知らせられない」と嘆く。
ブラジルを訪れるための短期ビザが必要なビジネス関係者も、この混乱でブラジル訪問を先送りせざるを得ないでいる。「短期ビザが必要なのは機械の修理やメンテナンスの技師たちだ。新法施行前までは、この手続きはずっと簡単だった。でも今ではビザがでない」とキンタス弁護士は語った。
投資家ビザや、法改定前からブラジルに居住、就労しているが、連警で外国人登録を行っていなかった外国人が登録を行う際も混乱が起きている。
今年1月から6月までに、労働省は1万2千人の外国人に就労ビザを発給した。労働省は何人に影響が出たか発表していないが、各種の手続きは数週間以内に正常に戻るとしている。