保健省が11月29日、母親の胎内、または産道を通過する際に梅毒に感染した乳児や胎児が死亡する例が、10年前の3倍になったと発表したと11月30日付現地紙が報じた。
昨年来、ブラジルでは梅毒患者が急増中との報道が繰り返されており、「梅毒の流行」という表現も使われている。10月16日には保健省が、2010年の梅毒患者は1249人だったが、2015年は6万5878人で、わずか5年間で5千倍に増えたと発表。同月31日には、2016年に発生した成人や妊婦、赤ん坊の梅毒感染者は、前年比28%増とのデータも発表された。
10月31日の発表によると、梅毒感染が確認された妊婦は、前年比14・7%増の3万7436人いた。また、母親の胎盤を通じて、あるいは出産時に産道を介して感染した先天性梅毒の子供も、前年比4・7%増の2万474人いた。この数字は、同年生まれた子供1千人につき6・8人が梅毒に感染していた事を物語っている。世界保健機構では、新生児1千人につき0・5人以下を目標としている。
16年の場合は、梅毒感染者の妊婦の37%が妊娠初期に感染が確認されており、胎児への治療も可能だったという。
それにも関わらず、16年は、胎内感染が原因で流産となった例が692件、死産が622件、出生後1年未満に死亡した例が185件報告されている。2006年に梅毒によって死亡した胎児や乳児の数は477人。死亡例最多は、2015年の1620件だった。
ブラジルでは、2014年にペニシリンの供給が止まって以来、梅毒患者が増加し続けている。10月31日の発表では、今年上半期も妊婦の感染者が3万470人、先天性梅毒の新生児も1万7818人いたが、保健省によれば増加速度が落ち始めたという。ただ、成人患者は、16年が8万7593人だったのに対し、今年上半期は9万4460人で、増加が続いている。
専門家は、梅毒流行や流産などが増えている理由は、①特効薬のペニシリンの供給不足、②同性愛のように、感染を招き易い性交例の増加、③妊婦へのケアの不備、④副作用を恐れ、ペニシリンの使用をためらう医師がいる事の四つだという。
14年末に起きたペニシリンの供給不足は世界的な問題で、ブラジルでの供給は今年のはじめにやっと正常化された。