現在ブラジルでは、テメル政権が望む年金改革の先行きに暗雲が立ち込めていることから、株式市場が急速にこれまでの熱を失い始めている。
サンパウロ株式市場指数(Ibovespa)は11月29日に2%、30日には1%下げ、11月全体では3・15%マイナスを記録した。
Ibovespaが月間でマイナスを記録したのは6カ月ぶりのことだ。
為替でも、30日のドル/レアル相場は0・95%のドル高で、商用ドルは1ドル=3・27レアルで引けた。
2020年で期限が切れる先物取引の長期金利も上昇し、2029年1月は11%台に戻った。
市場の空気が変わったのは、年金改革成立のため、賛成票取りまとめに重要な役割を果たす事を期待されている、ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)が、「年金改革に必要な票が足りない」と弱気の発言をしたことがきっかけだ。
下院の採決は12月6日に予定されていたが、採決の日程は13日に延びそうだ。しかし、そうなると、今年の最終審議日の12月22日にかなり近くなってしまう。
さらには、連立与党内でも大きな勢力だった民主社会党(PSDB)が連立離脱の動きを加速させていることもマイナス要因だ。
PSDBは「年金改革に反対票を投じた下議を罰しない」との方針で、既に政府原案から大きく譲歩している改革案に、更なる譲歩を要求する可能性もある。
投資顧問会社、グラドゥアル・インヴェスチメント社主席エコノミストのアンドレ・ペルフェイト氏は、「最近の政界の動きから、『年金改革は行われないだろう』と市場関係者は実感してしまった。今年のうちに下院を通せなければ、選挙の近い来年通す事はさらに難しい。こうした空気が株価に織り込まれ始めている。仮に通ったとしても、改革の中身は今よりさらに緩やかなものになり、次の政権に大きな宿題を残すことになるだろう」と語った。(1日付フォーリャ紙より)