3日からキリストの降誕を待ち望む待降節(アドベント)に入り、サンパウロ市の地下鉄などでは、4日からクリスマスキャロルのコーラスも始まった。毎年この時期は街角も色づき、ツリーの大きさや飾りの華やかさなどでその家やその時々の経済状況を推測したり、贈り物を準備したりする▼ローマ帝国の支配下で苦しむユダヤ人が待ち焦がれていた救い主キリストは、誰も目に止めない宿屋の片隅の馬小屋で生まれ、布に包まれて飼い葉桶に寝かせられた。キリストを最初に訪ね、喜びに包まれて帰路についたのは、遠い国の王や貧しい羊飼いだった▼身重の身で長旅をしたマリアは、ベビーベッドも新しい産着もない中で赤子を産み、見も知らぬ人達の訪問を受けた。我が子が通常とは違う形で宿り、生きる事を知っていたとはいえ、幼子を抱いて他国に逃げたり、十字架で処刑される我が子を見たりせねばならぬ母の辛さはいか程であった事か▼圧政下の人々にとり、解放者は長く暗いトンネルの向こうに輝く光だ。だが、当時のユダヤ人が望んだ開放と神が計画した開放はまるで次元が違った。自分の目線でしか物事を判断できないのは人の常だが、ユダヤ人がローマ帝国からの開放を望んだのに、神は罪や死に支配された世からの解放を準備した。無論、より大きな視点でキリスト誕生の意味を読み取った人は当時もいた。だが、具体的な圧政からの開放しか考えられない人はキリストの誕生や苦しみの意味が理解できなかった▼クリスマスは贈り物をもらう季節と期待する人もいるが、最大の贈り物はキリスト。贈り物の大きさや額で一喜一憂せず、贈り、贈られる動機や込められた思いを大切にしたい。(み)