来年の日本移民110周年を機会に、もし実現すれば、三笠宮殿下以来60年振りとなる皇族のサンパウロ州奥地、特にプロミッソンとマリリアへのご御訪問に期待が高まっている。それに先駆け、山田彰駐伯大使と野口泰在聖総領事は、11月24日から26日にかけて、同2市など近隣5カ所を視察した。訪問先では、各地で市長や日系社会から熱い歓迎を受け、現地では節目に向けさらに熱が高まってきている。
一行はまず24日、ノロエステ地方の中心都市にあるアラサツーバ日伯文化協会を訪問、その翌日にはプロミッソンの上塚周平記念公園を訪問。歓迎式にはアルトゥール・マノエル・ノゲイラ・フランコ市長、ゼ・イゴール副市長、入植百周年実行委員会の前田ファビオ委員長、ノロエステ連合日伯文化連合の安永信一会長、プロミッソン日伯文化体育協会の岡地建宣会長、同日系文化運動連盟の吉田正広会長らが出席した。
上塚植民地入植百周年でもある来年はプロミッソンにとって特別な年。開拓指導者の上塚周平翁を称え、「入植百周年式典」を来年7月22日、同公園で開催予定だ。
安永会長は「皇室御臨席の有無に係らず、プロミッソンでは着々と準備が進んでいる。市長が率先してやっている」と語り、「大使と総領事の訪問は、翌年の大祭典に向けた皆の士気をさらに鼓舞するものになった」と喜びを浮かべた。
山田駐伯大使ら一行は上塚周平墓地、隠れキリシタンが中心となって建設したクリスト・レイ教会、カフェランジアでは平野植民地、平野運平墓地等を訪問した。1915年、同地方では最初に平野植民地が開設、続いて上塚植民地。マラリアなど風土病に苦しんだノロエステ開拓初期の橋頭堡となった。
翌26日には、リンス慈善文化体育協会を視察した後、中西パウリスタ地方の中心都市マリリアを訪問。ノロエステの入植地が満杯になった後、大戦前後にパウリスタ地方が開拓最前線になり、結果的に勝ち負け抗争が激化した地となった。
ニッケイ・クラブで開かれた歓迎式では、ダニエル・アロンソ市長、飯星ワルテル連邦下議、水野ケンイチ会長、中村ミチオ副会長らが出席。日伯両国旗を手に同クラブの野球少年らが熱烈に歓迎した。中村副会長によれば「皇室御訪問が決まり次第、式典の準備を本格化させる」。同日、アロンソ市長から山田駐伯大使に対し、皇族への招待状が手渡された。
毎年7万人以上の来場者を誇る一大行事「ジャパン・フェスタ」を来年4月19日から110周年記念事業として開催予定。あわせて大阪府泉佐野市との姉妹都市協定の調印式が行われる。
ジョルナル・ニッパク紙によると、飯星下議は「訪問は非常に有意義なものになった。大使と総領事を同時にマリリアで迎えたのは、しばらくぶり。皇族ご御訪問の前触れになるのでは」と語った。一行は、三笠宮殿下御臨席の下に落成した同市庁舎前の記念庭園も訪れた。
野口在聖総領事は「どこの訪問先でも温かい歓迎を受け、市長にも同行して頂いた。日本に対する高い期待を感じるとともに、日系社会と現地社会の絆が強いという印象を受けた。皇族ご御訪問に向けた高い期待を感じた」とも語り、その実現に向けて引き続き働きかけていく意向だ。
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サンパウロ州ノロエステ地方を視察した山田大使と野口総領事。今訪問では、当初の予定にはなかったマリリア沖縄文化体育協会などにも足を運んだ。同行した岩嶋健次領事によれば「総領事は平野植民地の開拓犠牲者の碑で、マラリアを患って幾人も亡くなったという話を聞き、痛切な表情で話を聞いていた」という。プロミッソンの安永家も訪れ、一族の長老である忠邦さんから、上塚周平翁の晩年の様子を直に聞くなど印象深い訪問となったよう。野口総領事も「ノロエステ出身者がサンパウロ市日系社会でも多く活躍している。移民の故郷と呼ばれる所以が実感できた」としみじみと語った。移民史の原点だからこそ110周年を祝うのに相応しい場所だ。60年振りの皇室御訪問が実現なるか?!
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マリリアと泉佐野市との間で締結される姉妹都市協定。その発起人となったのが、野球チームにJICAボランティアで派遣されている元中日ドラゴンズ與浦幸二さんだ。当地での野球道具の老朽化や不足の現状を知った與浦さんが、実家のある泉佐野市に働きかけ、今年4月に野球道具一式の寄付を受けたのがきっかけ。マリリア市との間で、スポーツ振興で日伯交流できないかとの話が持ち上がり、20年に東京五輪を控えるなか泉佐野市も快諾。スポーツを越え、文化、経済、人的交流を含む枠組となる見込みだ。與浦さんは「マリリアは日本との繋がりを強く求めている。両国の掛け橋になれればという気持ちでお手伝いしたい」と見通した。