年末の風物詩――「第23回ブラジル紅白歌合戦」が3日、サンパウロ市の文協大講堂で行われた。ブラジル日本アマチュア歌謡連盟(INB、北川好美会長)主催。1500人が来場し(主催者発表)、2階席まで埋まる盛況ぶりだった。熱戦の末、白組が栄光を勝ち取った。
紅組、白組の50組と美空ひばりを歌った17組の計67組が出場。優勝した白組は今回で12勝10敗1引き分けとなった。午前10時に開幕し、勝敗を決するまで9時間半に及んだ。
先攻の白組はジオール・マルセーロさんが島唄(THE BOOM)で先陣を切った。伸びやかな歌声、三線とバンドの生演奏、映像とダンスの演出が三位一体となったステージに、観客は大きな拍手を送った。
原野グスターボさんは「山河」(五木ひろし)を披露。日本舞踊家の田畑ひろみさんが楽曲に合わせて舞い、重厚な楽曲と緩やかな舞踊の所作が幽玄な雰囲気を生み出した。対する紅組は21歳で最年少出場者の宮村春美さんが堂々と「縁」(島津亜紀)を歌い上げた。
午前の部のトリは注目の歌手、中島幸夫さんと宮原ジョーゴさんによる「オンリー・ヒューマン」(K)。中島さんは10月に海外日系人協会が主催した国際日系人歌謡大会で優勝。バレエダンサーの松永クラリッセさんの洋舞が舞台を盛り立てた。
午後は、特別企画「美空ひばり生誕80周年〃不死鳥よ…永遠に!〃」を行い、美空ひばりの名曲の数々をコロニアののど自慢たちが再現した。総合司会の藤瀬圭子さんが美空ひばりの生涯を綴った文章を読み上げ、時代を追って「柔」「悲しい酒」「真っ赤な太陽」などの名曲が歌われた。最後には北川会長が藤間流日本舞踊学校の団舞とともに「川の流れのように」を熱唱した。
歌合戦後半では中島幸夫さんが袴姿で再登場。国際日系人歌謡大会優勝時に歌った「北緯50度」(細川たかし)を情感たっぷりに歌い上げた。
最後は紅組、柿木ゆきえさんによる「あなたのブルース」(矢吹健)。きらびやかな衣装に身をまとった紅組の歌手たちが集合し、豪華絢爛の様相となった。
会場入り口には、移民110周年の前年祭として移民の歴史をたどる写真展示を設置した。笠戸丸から今までの移民史を約50枚のパネルで説明。過去の同歌合戦のパンフレットや美空ひばりが逝去した後に関係者に配布された冊子など貴重な資料が陳列された。
日本アマチュア歌謡連盟の北川朗久(あきひさ)名誉会長は「イベントは大成功。1年がかりの準備が実を結んだ」と胸をなでおろした。美空ひばりの特別企画について「日系社会の永遠のスター。生誕80周年の今年こそやらなくてはいけないと思った」と話した。
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ブラジル紅白歌合戦の審査員は日系団体の代表者、日系議員、カラオケ団体関係者など30余人。紅組と白組が交互に歌うので、毎回どちらかに投票する。審査員のひとり、四海和男さん(86、二世)は約30年に渡って当地のカラオケ大会で審査してきた熟練。審査のポイントを尋ねると「華やかさ」と答えた。紅白に出場するのはカラオケ大会で名をあげたのど自慢たち。「みんな上手いから歌唱力で差がつきにくい。出てきたときの印象が華やかで、素晴らしいショーだった方を選ぶ」とのこと。レベルが高いだけに審査も一苦労!?