【既報関連】ブラジル政府が年内下院承認を目指すも、審議の越年が確定した社会保障制度改革の問題だが、ここ20年間のブラジル労働市場における雇用形態の変化が無年金層を拡大させ、社会保障制度に関連した国庫負債を拡大させていると17日付現地紙が報じた。
国立社会保険院(INSS)のデータは、比較的高額な給与を得て、社会保障費も多く負担する層が減少した事を物語る。1996年から2005年にかけて、7最賃を受け取っている層は全体の14%から、4・8%へと減少した。さらに上の層(15最賃以上を受け取っている層)は33%減少した。
これは高額な社会保障費を負担する層が減り、国家負担の増加が、国民から徴収する社会保障費の増加を上回り、赤字がかさむ事を示している。
高額給与者の減少は、彼らの多くが独立事業主になった事が理由だ。2009年から15年にかけて、独立自営者や会社経営者など、会社の従業員でない年金負担者の数は、企業の従業員の増加ペースを上回って増えている。同時に、高額給与所得者(=高額社会保障費負担者)の減少も加速した。
技能も高く、給与も高い労働者が独立事業主としてサービスを提供し始めた場合は、雇用者には給与の支払い額が減り、独立事業主には所得税支払いが減るという利点があった。
シンクタンク市民税務センター(CCiF)部長のベルナルジ・アッピィ氏の計算によると、3万レアルの賃金支払いの際、従業員には4285レアルの税金が、雇用者には1万1379レアルの税金がかかるという。
同じ仕事を独立事業主として請け負い、同じ報酬を受け取ると、支払う税金は、個人として1181レアル、法人としては4899レアルだが、法人として支払うべき分は簡易型の申告書を使うと1962レアルまで下がり、個人として支払う税金と合計しても3143レで済むようになる。
納税額を少なくするため、多くの独立事業主たちは最低賃金を収入として申告する。この場合、社会保障費の支払い額もその額をベースとして計算される。ただし、それでは、年金生活に入った時に受け取れる年金額も最低賃(今では月額937レ)にしかならないため、独立事業主たちは老後に備えて、貯蓄や投資を行う必要がある。
ダッタフォーリャの調査では、非給与所得者の9割以上は私的年金をかけておらず、6割は老後資金のための貯蓄や投資を行っていないとの結果が出ている。
調査では、富裕層でも77%が私的年金に加入しておらず、45%は貯蓄をしていない事が判明した。収入の大小にかかわらず、非正規雇用労働者の中で、自主的にINSSの年金を支払っているのは3分の1以下に過ぎないという。