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日本文化の継承・普及の戦略立案を=《下》

移民の原風景――多くの移民がこのサッペー小屋から生活を始めた(移民史料館)

移民の原風景――多くの移民がこのサッペー小屋から生活を始めた(移民史料館)

 日本文化の継承・普及戦略で、日本に関するポ語情報をSNSやインターネットで大量にばら撒いて若い世代を惹きつけるのを「序」、ジャパン・ハウスや日本語学校、日本文化講座などで学んでもらうのを「破」とした。「破」は一般ブラジル人向けの部分が強いが、日系人向けとして重要なのは移民史料館やサンパウロ人文科学研究所の役割だ。
 日系人向けには日本の歴史や文化だけでなく、移民史やルーツ関する情報を必ず入れたい。アイデンティティへの誇りが加わり、日系意識が強まるからだ。
 移民史を知るために最適なのは移民史料館だ。でも1978年に開館して以来、基本的な展示内容は変わっていない。貴重な史料が山のように集まっているのに、それを読みこなして研究・出版するような研究部門がないことが残念だ。この部分をサンパウロ人文科学研究所との業務提携や合併によって実現してほしい。
 史料館40周年で大規模改修計画が持ち上がっている。物理的な展示の改修だけでなく、運営面も大幅改変してほしい。人文研と連携して移民史に関するポ語勉強会、セミナー、上映会、読書会などをどんどん開催してもらいたい。
 「空中戦」で移民史に関心をもった日系人への「地上戦」の一番核心の部分だ。日系人向けの深い内容を提供するコースに特化してほしい。
 最後に、ある程度日本文化を学んだ新世代が〃援軍〃となって日本文化を普及する側に回ってもらう最終段階「急」について説明したい。
 「フンド・ジョーベン(FJ、若者基金)」を110周年の機会に作れないだろうか。日本文化の良い印象が広まることで利益につながるのは、日本進出企業も一緒だ。ぜひ若者基金には日本企業からの積極的な出資を募りたい。
 「地上戦」によって日本文化・歴史に関心を持った若者たちは、「日本文化の継承普及のために自分も一肌脱ぎたい」と思うようになり、何か企画を考えるだろう。そんな時に「さあやってみろ」と背中を押すのが若者基金だ。
 「日本文化の継承・普及を意図した企画」「30代までの若者が中心になったグループ」などの条件に合った企画を募集審査し、毎年幾つかに投資する。日本政府はこのような企画を立てる人材を、どんどん留学生として受け入れてほしい。実際に日本の良い所を体験してもらい、さらにブラジルに広めてもらうのだ。
 日伯の様々な面の比較、西洋と東洋の対比などの研究をどんどんしてもらい、毎年、本として刊行していく。それが日本への関心の根を深いものにする。思想はある程度の幅と深みがないと定着しない。そんな研究をするためには基礎的な資料や文献がすでにポ語になっていることが前提条件だ。その出版助成を日本政府筋にお願いしたい。
 さらに日系社会の子供向けには移民史の絵本が必要だ。日本語学校で使うような小学生向け、中学生向け、高校生向けの移民史読本がそれぞれ欲しい。
 思想を強めるには本を読んだり雑誌を読んだりして、繰り返し繰り返し、一定の方向の意見を吸収することが肝要だ。10代や思春期の人格形成期にそれをすることで、その人の一生に関わる大事な思想的な背骨となる。
 「空中戦」で情報を広め、「地上戦」で実際に足を運んでもらって関心を深め、「FJ」によって援軍になってもらい、日本文化の「陣地」をどんどん広げていくという戦略だ。
 これを続ければ続けるほど、どんどん「陣地」は広がる。今始めれば、移民150年の時には驚くような結果が生まれている。
 「空中戦」と「地上戦」はバラバラに行うのではなく、5団体が役割分担し「今年はこれをテーマに」などと決めて行けば一番効果的だ。
 9日の文協評議委員会で評議委員長の山下譲二さんが、日本の「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会報告書」の内容を説明し、「この動きに応える行動を考えるための委員会の設置」を提案して承認された。
 この枠組みは素晴らしい。外務省やジャパン・ハウスにも入ってもらい、日系社会の代表団体、地方団体代表も含めた本当の「オール・ジャパン」で日本文化普及・継承の戦略を具体化してほしい。(深)