金は盗むが仕事もする―。パウロ・マルフ元サンパウロ市市長(現下議)を称した表現の一つだが、最高裁のエジソン・ファキン判事が19日、元市長に即座の服役開始と議席剥奪を命じ、本人も翌朝、連警に出頭したと20日付現地紙が報じた。
最高裁は既に、今年5月23日に、市長在任中(1993~96年)に横領した金を国外の銀行口座に送金していたとして、資金洗浄罪で7年9カ月と10日の禁錮刑と130万レアルの罰金、下議罷免を言い渡していたが、刑執行や議席剥奪の時期に関しては明確にされていなかった。
元市長の弁護士による上告は、10月に最高裁第1小法廷が棄却。今回の決定は、同件で報告官を務めたエジソン・ファキン判事が再上告の棄却と同時に出したもので、その内容は同日中に連警総監に通達された。
元市長は19日午後、刑執行命令が出た事を知らされ、20日朝、サンパウロ市の連警本部に出頭。身体検査を受けるため、11時過ぎに一旦、連警を後にしたが、正午頃、連警に戻った。収監先の刑務所名はまだ明らかにされていないが、刑執行に関する指示は連邦直轄区の連邦地裁に緊急通達されており、最高裁への服役開始通達も同地裁判事が行う事になっている。
今回の資金洗浄は、アグア・エスプライアダ大通り(現、ジョルナリスタ・ロベルト・マリーニョ大通り)建設に関する公金横領に関連したものとされている。
ファキン判事の判断では、元市長は昼間の外出などは許されない、完全収監とされているが、マルフ氏の弁護士は、元市長は86歳という高齢で前立腺ガンの治療中でもある事を理由に、自宅軟禁とするよう、最高裁長官に訴える意向だ。
元市長の不正に関する捜査を担当していた検察官の一人は、「ブラジルでの汚職に対する衝撃的な判断だ。元市長への服役命令は、検察のみならず、ブラジル社会全てに対する大きなクリスマス・プレゼントだ」と賞賛。4億ドルを横領した事が明らかなのに、元市長が罰せられずにいた事を苦々しく思っていた別の捜査官も「サンパウロ州検察にとって、歴史的な判決」と喜んだ。
なお、ロドリゴ・マイア下院議長は19日、刑執行は最終判断であり、下院が扱う事項ではないとの見解を発表。最高裁は先に、議席剥奪は議会が決めるべき事との判断を下しているが、同議長は、同件に関してはまだ、全ての資料が出揃っていないと答えている。