米国の航空機製造会社ボーイング社とブラジルのエンブラエル社は21日、潜在的な提携に向けた交渉を進めていることを明らかにしたと21、22日付現地各紙・サイトが報じた。
一部のメディアは「合併」と報じているが、両社はまだ、「提携」の内容が何を指すのかを明らかにしていない。だが、連名で発表された文書には、「全ては協議の過程にあり、エンブラエル社が行う『提携』『株式売却』などのオペレーションにはブラジル政府の承認が必要」と記されていた。
この知らせが明らかになった21日、エンブラエル社の株は急騰し、前日比22・5%上昇を記録した。
米国紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、ボーイング社の狙いはエンブラエル社の経営権取得だが、それにはブラジル政府やブラジル空軍が大きく抵抗するだろうと報じている。
ブラジリアで開かれていたメルコスール首脳会議に参加していたテメル大統領(民主運動党・PMDB)は21日、ラウル・ジュングマン国防相やニヴァウド・ロッサート空軍司令官と会談し、「エンブラエル社は交渉不可能だ。(売られる事はない)」と語った。
エンブラエル社は旅客機と共に軍用機を生産しており、そこにはブラジル技術の粋(すい)が込められている。ブラジル政府は、エンブラエル社が米資本の傘下に入ることによる技術や機密情報などの流出や、米国議会の干渉による軍用機の生産停止といった事態が起きることを警戒している。
ボーイング社とエンブラエル社間の合意にはブラジル政府の承認が必要だ。ブラジル政府は1994年のエンブラエル社民営化後も、重要事項において拒否権を行使できる「黄金株」を所有しているからだ。
ただし、ブラジル政府は、国営の社会経済開発銀行(BNDES)の出資会社であるBNDESPAarを通じて、E社株の5・4%を押さえているに過ぎない。エンブラエル社株は米国の投資顧問会社ブランデス社が15%を抑えてはいるが、64・5%は市場に流れている。
コンサルティング会社ベイン&カンパニーの共同経営者で、航空業界の専門家のアンドレ・カステリーニ氏は、B社はE社の強みである地域間旅客機(リージョナル・ジェット)部門を欲しがっていると分析している。同氏は「エンブラエル社は軍用機も製造してはいるが、その大半は輸送や訓練用で、戦闘用ではない」し、「軍用機部門ではボーイング社には到底及ばない」との見解を示した。
また、今回の動きは、欧州大手のエアバス社とカナダのボンバルディア社が10月にパートナーシップ締結を発表したことに対抗するためのものとの見方も出ている。
なお、市場では、合併はエンブラエル社に益するところの方が大きいとの見方が一般的だ。