ブラジル外務省は24日、ベネズエラ政府が23日にルイ・ペレイラ在ベネズエラ、ブラジル大使を「好ましくない人物」とし、国外追放を命じた事を受け、後任大使を送らない方針を決めたと、24、25日付現地各紙が報じている。
在カラカス、ブラジル大使館の指揮は今後、代理大使がとる。ブラジルは国交断絶までは考えていない。
ペレイラ大使を「好ましくない人物」と認定したのはデルシー・ロドリゲス元ベネズエラ外相だ。同氏は、反対勢力が多数を占めていた同国議会を無効化するためにマドゥーロ政権が作った制憲議会の議長を務めている。
同議長は、「親愛なるブラジルが憲法上の整合性を回復するまで、ブラジル大使を我が国にとって『好ましくない人物』と宣言する事を決めた」という。「大使追放の責任はジウマ前大統領を不当に罷免したブラジルにある」との論理だが、「罷免から1年半近くも経った今になってなぜ?」という疑問には答えていない。
ブラジル外務省が、あえてペレイラ大使を交代させない方針を採ったのは、ブラジル政府が、ベネズエラの宣言は大使個人に向けられたものではなく、ブラジル政府に向けられたものと認識しているからだ。
ベネズエラは、カナダのクレイブ・コワリック代理大使の追放も宣言したが、これは、同代理大使が反ベネズエラ政権的な振る舞いをとり、インターネットにも批判的な書き込みを行ったためだ。
ペレイラ大使はブラジル左派の労働者党政権下の13年12月に任命され、ベネズエラのチャビズム(前大統領チャベス氏の意向をつぐ左派。マドゥーロ政権もその後継)の流れをくむ高官とも懇意だ。
ペレイラ大使はベネズエラがジウマ前大統領罷免を強く批判した昨年8月にブラジルに召喚されたが、今年5月にカラカスに復帰した。だが、7月に誤送信した携帯電話のメッセージでマドゥーロ政権幹部と昵懇である事が判明。ベネズエラ野党勢力が、ブラジル政府は、表向きはマドゥーロ政権に批判的な態度をとりながら、裏では緊密に繋がっているのでは? 批判していた。
ペレイラ大使は年末休暇でブラジルにおり、ベネズエラ側の宣言が正式なものとなれば、カラカスに戻ることは出来なくなる。
ブラジル外務省は相互作用措置を採る意向で、在ブラジル、ベネズエラ大使のアルベルト・パディーリャ氏にも「好ましからぬ人物」認定を行う事が濃厚だが、ペレイラ大使の国外追放はまだ正式なものではなく、ブラジル外交筋も24日現在、パディーリャ氏とのコンタクトをとっていない。