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「ルーラは第2のマンデラ」か?

グレイシ・ホフマンPT党首(Lula Marques/AGPT)

グレイシ・ホフマンPT党首(Lula Marques/AGPT)

 今月24日から、南大河州ポルト・アレグレにある連邦第4地域裁(TRF4)で、ルーラ元大統領の収賄疑惑の裁判が行なわれる。同氏にとって2審目のこの裁判で1審どおり有罪となれば、フィッシャ・リンパ法適用により、10月の大統領選に出馬できなくなる▼だが、仮に有罪判決が出たところで、すぐにルーラ氏の出馬がとりやめになり、監獄に入ることになるほど事態は甘くは無いだろうと、コラム子は見ている。なにせルーラ氏は6件の容疑で告発されようと、世論調査での国民の「次の大統領」への支持率は依然トップ。30%を超える勢いだ。熱狂的な支持者が黙っているはずはない▼ルーラ氏の場合、ただ単に「人気がある」というだけですんでおらず、人によっては本気で「命の恩人」と信じている人たちが存在する。仮に有罪となろうものなら彼らが何をしでかすかわからない怖さがある▼それを予感させる言動が12月に起こっている。ルーラ氏の労働者党(PT)の上院議員パウロ・パイム氏は「もしルーラ氏が監獄にでも入るものなら、第2のネルソン・マンデラになる」とヴェージャ誌の取材で語ったのだ▼マンデラ氏といえば、かのインドのガンジー氏らと並ぶ、人権問題に関しての20世紀の偉人だ。南アフリカ共和国の人種差別政策「アパルトヘイト」と戦い、26年間も投獄されながらも国際世論の助けで釈放され、遂には同国の大統領にもなり、ノーベル平和賞を受賞したほどの人物だ。そのような人物とルーラ氏は同格に語る人が、手下とは言え存在する▼いや、そのように思っているのはパイム氏だけではない。ベネズエラの独裁者であるニコラス・マドゥーロ大統領も2016年の時点で全く同じ主旨の発言を既に行なっている▼さらにルーラ氏自身も2012年に、ボルサ・ファミリアをはじめとしたブラジル内での福祉政策で、その名も「ネルソン・マンデラ人権賞」なるものの受賞までしている▼さらにルーラ氏の場合、世界中の左翼勢力や、さらには芸能界にまでシンパがいるのも事実だ。民主運動党(PMDB)所属ながら熱烈なルーラ・シンパと言われるロベルト・レキオン氏は「TRF4で裁判がはじまれば、ウルグアイのムヒカ前大統領や、(世界最大の社会派ロックスターの)U2のボノだって法廷にやって来るさ」とまで言っているほどだ▼レキオン氏の発言の信憑性は定かではないが、「ルーラ氏、有罪確定」となれば、ジウマ氏の大統領罷免を上回る、国の内外を問わない大騒動となるのは間違いない▼また、司法関係者にもPT派が多いことで知られるブラジル。TRF4が有罪としても、ルーラ氏が高等裁に控訴して同氏を助ける判断をすれば。裁判結果が覆ることもありうる▼そして、有罪判決が覆らなかった場合、コラム子的に一番恐れている存在がPT党首のグレイシ・ホフマン上議だ。ルーラ氏でさえ資質を疑問視して距離をとり続けているマドゥーロ・ベネズエラ独裁政権を、1千パーセント以上のハイパー・インフレや、政治犯への抑圧、議会の無効化など国際的報道が相次ぐ中で、彼女は同政権を認める党決定を、ルーラ氏の判断を無視して行なったほどの人物だ。そんな彼女が恨みを引きずり、PTを動かすことになると・・。想像したくない。(陽)