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総領事館=官民でビジネス機会創出を=外務省研修生OB会で=進出日本企業2社が紹介

企業説明を行うJCBカードの矢澤さん(撮影:望月二郎)

企業説明を行うJCBカードの矢澤さん(撮影:望月二郎)

 外務省研修生OB会が12日にサンパウロ市のレストランで開催され、進出日本企業2社が自社の説明を行った。外務省が昨年作成した日系社会に関する提言(中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会報告書)で、日本の政府と経済界が一体となって日系社会との連携を追求していくことやビジネスマッチングを行っていくことの重要性が言及されており、今回の取り組みはその一環だ。

 前述の提言は、日系社会と日本の経済界が接点を持つために、在外公館の仲介で進出日本企業と日系人リーダーとの交流、日系人のネットワークを活用したビジネス連携の機会創出が推奨されている。各分野の日系人材の発掘・育成のために日本留学・研修制度の同窓会組織を活用することも提案している。
 その流れで在聖総領事館が、同OBに向けて進出日本企業が紹介を行う機会を設けた。外務省研修制度は1965年に始まり2006年に中止され、13年に再開。これまでに約200人のOBを輩出し、新年会には約70人が出席した。
 OB会会長の秀島マルセロさん(47、三世)は、「OBには帰国後に日系企業に就職せず、自分で事業を起こす人も多くいる。今回の取り組みはそんな事業家が日本企業と関係を持つ良い機会」と前向きな姿勢。
 企業説明をしたのは、IT分野に強みを持つNECブラジル社とクレジットカード会社JCBカードの2社。事業内容や歴史を紹介した。
 NECブラジル社の水口直人さんは今取り組みについて、「これまで会社として日系社会に積極的な接点を持っていなかった。日系社会とのネットワークを構築し、良い人材の情報が手に入るようになれば」と期待をかける。
 「『ビジネスマッチング』を前面に押し出した会合だと堅苦しい感じがして、スムーズに話が進まない印象がある。今回のようにざっくばらんに交流できれば、思いもよらない良い話が生まれ、その後につながりやすいと感じる」と話した。
 JCBカードの矢澤直祟さんは、日系社会において認知度を高めることを目的に企業紹介を行った。「リベルダーデ区の日本料理の飲食店などでJCBカードを使えば何かしらの特典が得られるなど、日系人の皆様に喜んでもらえるサービスを展開している。ぜひ利用してほしい」と話した。
 在聖総領事館の高元次郎領事は「日系企業には人材確保の点でも、ビジネスマッチングの点でも大きなチャンス。反応が良ければ継続したい。今回はモデルケースとして大手2社が企業紹介を行ったが、中小企業も含めてこういった機会を活用してもらえるよう推進したい」と展望した。


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 外務省研修生OB会出席者の多くは既に定年を迎えているが、会の中心を担うのは秀島会長など40代の現役世代。そのうちの一人で広告会社を経営する有村侑奘ヘンリーさんは今回の進出日本企業による企業説明を、「企業の方から日系社会と距離を縮めるのは画期的」と評する。「これまでもブラジル日本商工会議所があったが、日本の会社の集まりという感じで、日系事業主にとって入り込み辛かった。日系人材やビジネスに関心がある企業が接点を求めてくる流れは、相互の連携のために歓迎されるべきもの」と話した。
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 外務省研修生OB会に出席した野口泰総領事は「日伯官民が協力して日系社会を活性化させる」との方針を明確にした。在聖総領事館は今後、文部科学省留学やJICA研修OB会でも同様の取り組みを検討中だという。他にも「日本政府の広報施設であるジャパン・ハウスが県人会と協力して地方の魅力を発信していくことも企画されている」と話した。日本政府と日系社会のより一層の連携が期待される。