ブラジルが誇ったサッカー界の英雄のひとり、ロナウジーニョがついに正式に現役引退を発表した▼もう2年以上も実戦での姿を見ていなかったことから、アナウンスがなくても引退しているものと想っていた人がブラジルでは多かった。それでも02年のセレソンのW杯世界一の立役者のひとりであり、メッシの前の時代のバルセロナのスーパースターで、「世界一プレイヤー」の称号まで得たほどの人物だ。反響はかなり大きい▼ただ、コラム子が気になることがある。それは「なぜ、今のこのタイミングで現役引退発表なのか?」ということだ。別にそのまま「事実上引退」で済ますこともできたと思うのに、なぜ今あえて現役引退を発表したのかが気になるのだ▼実はロナウジーニョに関しては昨年末、気になるニュースを耳にしていた。彼が、この10月に行なわれる統一選挙で、ミナス・ジェライス州の上院議員か下院議員に出馬する、という話だ。正直なところ、彼が政治家を目指すようなタイプだとは思っていなかったので、驚きは大きかった▼そのときの報道で耳にしたのは、ロナウジーニョを選挙に誘っているのが、保守系右翼政党の全国環境党(PMN)。その当時、話題の極右大統領候補のジャイール・ボルソナロ氏の政党となり、「愛国党」に改名予定だったところだ▼これに関しては非常に謎が大きかった。なぜ、ブラジルでの登録名どおり「ロナウジーニョ・ガウーショ」と南大河州出身者(ガウーショ)という名前を持つ彼が、いくら現役の晩年にアトレチコ・ミネイロを南米一に導く活躍をしたからといって、なぜミナス・ジェライス州なのか。プラス、黒人で多少なりとも人種差別も経験したはずなのに、なぜ極右政党なのか。それがわからなかったからだ▼ただ、その後、PMNとボルソナロ氏の関係が決裂。これでPMNの今後の勢いや知名度アップがあるとも思えず、同党からのロナウジーニョ擁立は正直微妙に映る。果たして、それでも政界進出はあるのだろうか▼ブラジルで政界進出といえば、94年W杯でブラジルを優勝に導いたエース・ストライカー、ロマーリオの例がある。彼は11年にリオ選出下議、15年には同じく上議に当選。この10月にはリオ州知事選への出馬も有力視されるなど、これまでの政治史上で最も成功した元サッカー選手になりつつあり、後続に道を切り開いている最中だ▼そこをロナウジーニョが続けられるか・・となると、コラム子にはいささか疑問だ。政治知識の有無以前に、彼の現役晩年の素行ゆえに心配になるのだ。ロナウジーニョはバルセロナを退団して以降、どこか糸の切れたタコのような状態になり、移籍を数々繰り返した。前述のようにアトレチコ・ミネイロの在籍時のみ往事の輝きが戻ったが、それも長続きしなかった。その後も移籍した先では「練習に参加しない」ことなどが問題となり、最後のフルミネンセも放り投げるようにして中途半端に終わっていた。そんな人物で果たして政界がつとまるのか▼サッカー選手として大きな栄光を味わった人物が、引退後に同じように別の道で成功する例はどんな大物選手でも稀だ。その意味でロナウジーニョのその後も気になるのだが、果たして? (陽)