【既報関連】テメル政権(民主運動・MDB)が一昨年より優先課題として取り組んできた社会保障制度改革は、議会内合意形成のプロセスが遅れ、昨年末に採決は越年となった。2月5日から今年度議会も再開し、採決予定日の2月19日が迫る中、社会保障制度改革に賛成の議員は308人を大きく下回る237人程度に過ぎないと、5日付現地各紙が報じた。
大統領サイドは昨年12月はじめまで、充分な賛成票が集まらなくても採決を行う意向だったが、同月12日には、賛成票を確保するまで投票しないことや、投票は2月となるであろうことを口にし始めていた。
だが、今年に入ってからも状況は大きく変わっておらず、1月29日に大統領府が行った調査でも、賛成票は237票しか確保できていない。
このような状況下、2日には大統領自身が「現政権は社会保障制度改革を行わなくても持ちこたえているが、今後の政権は耐え切れない」と発言した。5日付現地紙によれば、ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)は、現状のままなら社会保障改革案の採決は行わず、同案を今年10月の総選挙後に発足する来年からの新政権に向けて現政権が遺す「遺産」にすべきだと考えているという。
同下院議長は、大統領が議会での審議を促すために行った、「我々のやるべき事はやった」という発言を快く思っておらず、「後の責任は議会にある」として、責任を自分達に被せようとするなら、痛烈な反撃を行う意向だ。
マイア議長は、昨年中に2度起きたテメル大統領への告発と、最高裁で審理継続阻止のために、与党勢力は政治力をかなり消耗してしまったと見ている。
同議長は更に、政界や経済界、投資家の間では社会保障制度改革の失敗は既に織り込み済みの事実で、同制度の改革が成し遂げられなかった場合も、各企業が社会保障費を国家に納める時の仕組の変更(レオネラソン)や電力公社のエレトロブラス民営化など、議会の承認が得やすい方法で市場の動揺は軽減できるだろうとしている。
テメル大統領は4日にも、社会保障制度改革法案報告官のアルトゥール・マイア下議(社会民衆党・PPS)、エンリケ・メイレレス財相、モレイラ・フランコ大統領府事務局長官と会合し、改革案の更なる譲歩の余地はあるかを検討した。
態度を決めかねている議員団説得のため、現在検討されているのは、2003年以前に職を得た公務員への優遇措置と、年金と各種恩給の合計受給額の上限を2最低賃金とするとした条項の撤廃などだ。
議会は5日に再開したが、両院とも、社会保障制度改革以外にも課題が山積みで、下院の場合、今週は、幹線道路民営化への投資に関する暫定令(MP)と、州や市による連邦政府への債務の再交渉に関するMPの採決が行われる予定だ。