グラーシ・メンドンサ総弁護庁(AGU)長官は、連邦検察庁(MPF)に対してレニエンシア実施基準を統一する提案を行ったと、15日付ブラジル現地各紙が報じた。企業版の報奨付供述(犯罪を認め、捜査に協力することで、刑期短縮や罰金減額などの報酬を受けるという司法取引。企業には共犯者や、犯罪スキームの暴露も求められる)である「レニエンシア」の扱いを巡って、汚職対策省や会計検査院(TCU)との不和を起こさないようにするためだ。
AGUはこの提案に、「鏡の合意」という名をつけた。これによると、行政機関であるAGU、TCU、汚職対策省と、独立した捜査機関であるMPFが互いの善意の下に協力し、レニエンシアの新基準を作るため、TCUが脅しているような、「MPFと勝手にレニエンシアを結んだ企業は、別件での政府との業務契約締結に不適切であるとみなす」といった状況を避けうる。
連警とMPFによる大規模汚職捜査のラヴァ・ジャット(LJ)作戦は2014年に始まり、15年にはMPFとカマルゴ・コレア社の間で最初のレニエンシアが成立。その後、オデブレヒト、アンドラーデ・グチエレリスの2社も追随した。MPFはこれら3社に計86億レアルの罰金を科し、その後も政府との間で業務契約を結ぶことを認めた。
だが、これら3社は、リオ州の原子力発電所、アングラ3建設での水増し請求問題だけで、TCUから16億レアルの損害賠償を言い渡されるなど、各機関から各様の罰則適用を受け、どの機関に対してどれだけ払えばどの件については解決したと言えるのかがわからない状況下に置かれた。これら3社は今も、AGU、TCU、汚職対策省など、いかなる機関とも合意を締結できずにいる。
これらの企業は、LJ作戦で不正が暴かれた別の事業契約でも、レニエンシア成立時にMPFが科した罰金のほぼ倍の160億レアルの損害賠償を求められている。
レニエンシアの扱いを巡る各機関の対立は、MPFがオランダのSBM社との間でレニエンシアを締結しようとした時から始まった。政府はSBMとのレニエンシア成立を希望したが、TCUがAGUや汚職対策省(当時は国庫庁・CGU)が合意書にサインする事を嫌い、監査のやり直しを主張したため、レニエンシア成立は流れた。TCUはその後、SBMに10億レアル追徴を決めている。
だが、新しい形のレニエンシアでは、MPFとAGU、汚職対策省の3者が、企業側とレニエンシアを結ぶ交渉に入った段階から協議を重ね、企業側に科す罰金は損害額全てとする事を前提の合意書を作成する事になる。TCUはこの時点で合意成立と徴収額の連絡を受ける。企業側は三つの機関と同じ契約を取り交わす事になり、その後の混乱が起き難くなる。ただし、その後の捜査で別の不正が発覚したりして新たな損害額が確定された場合、TCUが差額を徴収する事が出来る。