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政治批判を受け止めたリオのカーニバル

ツイウチのパレード(Gabriel Nascimento | Riotur)

ツイウチのパレード(Gabriel Nascimento | Riotur)

 14日に行なわれた、今年のリオのカーニバルのスペシャル・グループのパレードの採点結果発表で画期的な出来事が起こった。政治批判を行なって物議を醸したエスコーラ、ベイジャ・フロールが優勝、パライゾ・ド・ツイウチが2位となったのだ▼今回のリオのパレードがこうした内容になることはかねてから言及されていた。だがいざ本番では、それが噂以上の規模で行なわれた。ファヴェーラでの殺人事件を思わせるショッキングなシーンや、金まみれの政治家が奇妙な笑顔で挑発的なポーズを取ったベイジャ。さらに、悪魔に扮したテメル大統領を登場させ、おそらく彼の手だと思われるものから、操り人形の糸を吊られた鍋たたきデモの国民を皮肉ったツイウチ。たしかに話題性はそれだけで十分だったが、コラム子には不安もあった。「果たして、こういう演出を審査する人たちが好むだろうか」と▼ところがふたを開けてみたら、これが1位と2位だ。それどころか「ファンタジア(衣装)」と「エンレド(テーマ)」に関して言えば共に満点の評価だ。敬遠するどころか、審査員たちはこのプロテストを喝采で迎えた▼もっとも今回のリオの場合、市と州の政治腐敗を伴った財政破綻により、カーニバル自体の開催さえ危ぶまれていた。審査員たちの間にも、そうしたリオ政界へのやりきれなさや強い怒りをぶつけたい気持ちが強かったようだ。▼今回のパレードで改めて浮き彫りになったのは、サンバ関係者には左寄りの人が多いことだ。ツイウチのパレードが受け入れられた、というのが何よりの証拠だ▼「ジウマ氏が政界クーデターに遭った」「社会保障制度改革は悪魔の仕業」といった考え方は、必ずしも国民の大多数が同意する考え方ではない。それを受け入れ、2017年にスペシャル・グループに上がってきたばかりの弱小エスコーラをいきなり2位にしてしまった。こうしたところも、コラム子には驚きだった▼その表現の根底にある考え方は、見る人の視点によっては必ずしも一致しないかもしれない。だが、こうした、世に対するストレートな不満がしっかりと公の場で表現され、さらには受け止められたこと。そして、当の批判を受けた政治家から咎められることもないこと。こうした状況があるうちは、問題山積な国ではあるが、まだブラジルは恵まれている方なのではないかと感じた。(陽)