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大志万学院=創立25周年、新校舎を建設=校長が自宅担保に借金で=「日本語、日本文化は重要」

教育への情熱を語る川村校長

教育への情熱を語る川村校長

 終戦後の1952年に日本語学校「松柏学園」として産声を上げ、コレジオ(小中学校)に発展した「大志万学院」は、今年で創立25周年を迎える。全人教育を掲げる同校は、日本語・日本文化を必修科目としながら、サンパウロ市内の熾烈極まる受験競争のなか、優秀な卒業生を世に輩出してきた。04年に現在の校舎に移転して以来、生徒数が急速に増加して今では400人となり、先週からは新築校舎を使い始めた。節目における今後の展望を、川村真由美校長から聞いた。

 「一言で言えない苦労があったからこそ、今の大志万がある。ここまで生き延びてこられたのは、色々な人に守られ、助けて頂いたおかげ」――そう謙虚に四半世紀を振り返るのは川村校長(58、三世)だ。
 松柏から独立し、同学院が93年にアクリマソン区で開校したとき、借家で無名だった。「よっぽど私たちの教育方針を信じてくれる親でなければ、子どもをあずけてくれなかった。最初は本当に難しかった。競合校に生徒が引っ張られることも」と苦笑する。
 月謝の払えない家庭の子供の面倒も熱心に見て生徒数を維持。教師陣も競合校から声をかけられたが、志を共にして危機を切り抜けてきた。
 倫理研究所や日本の篤志家の寄付を得て、04年に現校舎を建設。移転当時、生徒数はわずか80人。1歳半から15歳までの幼児、小・中学生、全クラスが満員となった場合、282人と想定された。
 だが生徒数は順調に増加の一途をたどり、6年前から1学年を2組に拡大。現在小学生3年生まで2組となり、生徒数は400人を越えた。校舎が手狭となったため、昨年から新棟建設に着手し、先週から使い始めた。

建設された新校舎

建設された新校舎

 建設費の融資にあたって「自宅を担保に入れて不退転の覚悟で借金した」という川村校長。「教育は苦しくても楽しいもの。子供のためにやるものが、上手くいかないはずがない」と揺るぎない教育への情熱を語る。
 今後の学校運営にあたっては、「まずは近隣の全伯有数の受験校に負けない学力が必要。だが、他の学校にはない特徴として、必須科目の日語・日本文化は大変重要なもの」と強調し、「新棟ができても場所が足りなく困っている。満足できるところまでしっかりやりたい」と襟を正した。
 「子供の可能性を見つけ、それを引き出すのが教育の役割。中学生まででに特徴ある教育によって人格の土台を作りたい」とし、高等部は新設しない見通し。「25年の歴史はある学校だが、一歩間違えればすぐ信頼は崩れてしまう。常に初心に戻って、学校を建てた精神を忘れることなく考えていきたい」と語った。
 創立25周年記念事業としては、8月25日に在校生と保護者とともにピクニック、9月29日には卒業生やお世話になった人や保護者ら1千人以上を招き、謝恩会を開催する予定だ。


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 今後の学校運営について手堅い方針を示した川村校長だが、「夢の中の構想」として、学外に日本語・日本文化を伝える文化施設、親のいない子供向けの教育施設を建設したい気持ちがあることを明かした。「問題のある子供はいても、問題児は一人もいない」という川村校長。「将来社会を共に生きていく子供が、どういう子供になるかは大人の手にかかっている」と語り、保護者をパートナーと位置づけ、時には家庭の問題にも踏み込み、子供の幸せのために問題を突き詰めて解決を図るという。一人一人と真剣に向き合う学校だからこそ、日系人のみならず、広く受け入れられているのかも。
    ◎
 大志万学院では普段から日本語を始め、茶道、書道などの日本文化が十分に教えられており、移民110周年だからといって特別に日本移民史を授業で取上げることはしないという。ルビ付の本紙紙面も松柏学園の教材として使われている。だが保護者に対して、自身のルーツを問うアンケートを配布し、様々な移民の家族の物語を聞き出している。それを基にして、授業のなかで科目別にプロジェクトを作成し、発表を行う計画しているとか。県連日本祭りのなかでも生徒が発表する機会が設けられる予定といい、家族史を紐解くことにより、自らのルーツへの認識を深めるよい機会となりそうだ。