日系四世に就労可能な日本での在留資格を与える新制度、四世ビザ問題について、日本国法務省がパブリックコメント(意見公募)を先月23日から1ヵ月間、公募した。それに対し、ブラジル日系社会を代表する関連4団体が、次に掲載する意見書を日本国法務省に提出した。コロニアの将来を考える上でも重要な問題であり、日系社会内のコンセンサス(意見統一)を促す意味で、ここに掲載する。(編集部)
「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件の一部を改正する件(案)」等に係る意見募集に対する意見
2018年2月20日
法務省入国管理局参事官室 殿
ブラジル日本文化福祉協会
ブラジル日本都道府県人会連合会
サンパウロ日伯援護協会
国外就労者情報援護センター
在サンパウロ日系4団体は「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件の一部を改正する件(案)」等に係る意見募集に対し、次の意見を申し上げます。
▼第1 意見の趣旨
(1)在留資格について四世の日系人の在留資格を日系三世と別にするのではなく、同様に取り扱っていただくようお願い申し上げます。
(2)四世の日系人のみならず、五世以降の日系人の在留資格についても配慮を頂きますようお願い申し上げます。
(3)新制度導入にあたっては子弟の教育問題へのいっそうの配慮をお願い申し上げます。
▼第2 意見の理由
(1) 日系一世は日本国籍を有しているのが通常です。したがって、従来から日本人として日本に入国し、在留することができました。日系二世についても、従来から「日本人の子として出生した者」として在留資格が付与されていました。日系三世については、従来は個別に審査し、「法務大臣が特に在留を認める者」として日本への入国および在留が認められていました。
しかし、1990年の入管法改正で定住者の在留資格が創設されて、定住者として日本への入国および在留が認められるようになりました。
この法改正の後、多くの日系三世がいわゆるデカセギとして日本に渡航しました。そして、2007年末には日本に在留する日系ブラジル二世及び日系ブラジル三世の人数は31万7000人に達しました。
入管法が日系三世に定住者としての特別の地位を与えたのを踏まえて、1993年の海外移住審議会意見は、移住者支援において、これまでの移住者本人を対象とした支援にとどまらず、概ね日系三世までを対象とすることが必要且つ適切であるいう方針を打ち出しました。
これによって、三世までの日系人が移住者支援の対象になりました。しかし、その陰で日系四世は日系人の定義から除外されてしまいました。
(2) 日系四世が日系人の定義から除外されているという状況に対して、私たちはこれまでに多くの不満の声を聴いてきました。ある人は単に祖父が日本人であるというだけで、他の親族はすべて他国にルーツを持っているのに日系人としての保護を受けています。これに対してある人は、父方母方いずれの祖父母も日系人で本人は血統的には100%日本にルーツを持っているのに、日系人としての保護を受けられません。こういった不満です。同じ日系人として生活している者の心情としても、日本人の血を引く日系人に定住者の在留資格を認める1990年の入管法改正の趣旨からしても、このような不満が出てくるのは当然のことだと思います。
私たち日系団体にも、徐々に四世あるいは五世の仲間が加わっています。日系社会で生活する上で、三世も四世も何も違うところはありません。
しかし、ある人は三世なので日本で生活することが許され、ある人は四世なので日本では生活できないのです。同じ日系人でありながら、同じ日系社会という環境で暮しながら、このような差が生じていることは残念でなりません。
それから、リーマンショックの際に、いわゆるデカセギ子弟が多数ブラジルに帰国したことによって生じた新たな問題もあります。今年1月5日にも、在学中の日系四世の親が帰国した場合に、当該日系四世の告示外定住を認める通達が発出されています(平成28年1月5日付法務省管在第57号)が、リーマンショックが発生した2008年以降、多くの日系四世が、親である日系三世のブラジルへの帰国の影響を受けて、自身もブラジルへの帰国を余儀なくされてきました。
彼らは日本で育ったいわば「新日系一世」とでもいうべき存在です。ポルトガル語ではなく日本語を母語とし、ブラジルの日系人というよりも日本人の文化を身に着けている者が多くいます。しかし、日本に渡航して生活することは許されません。(つづく)