北朝鮮の金正恩最高指導者と、その父で先代の金正日氏(2011年死去)が、90年代にブラジルの偽造パスポートを使用していた疑惑が、実物のパスポートのコピーの存在と共に浮上し、話題を呼んでいる。2月28日付ブラジル国内各紙が報じている。
ロイター通信の報道によると、見つかったパスポートのコピーは1996年2月26日付で発行されたもので、発行元はチェコのプラハにあるブラジル大使館となっている。有効期限は2006年2月25日までの10年間だ。
パスポート上の金親子は、出生地が「サンパウロ州サンパウロ市」で、「韓国からの移民」ということになっている。
名前は正日氏が「イジョン・ツォイ」で、生年月日も、これまで知られていた1941年ではなく、「1940年4月4日」になっている。一方、正恩氏は、「ジョセフ・プワグ」という名前で、これまで正式に明らかにされていない生年月日が、「1983年2月1日」と記されている。
ロイター側は、金親子はこのパスポートを使って渡航先の国のビザを得ようとしていたのではないかと憶測している。このパスポートは、過去に少なくとも、ブラジル、日本、香港への渡航で使われたと見られている。
日本の読売新聞は2011年に、正恩氏がブラジルのパスポートを利用して東京を訪れたことがあると報道しているが、東京訪問は「1991年に行われた」とされており、今回発覚したパスポートの有効期限とは異なる。
正恩氏が10代の頃にスイスのベルンに留学していたことは公表されているが、その際は「大使館の運転手の息子」として過ごしていたとされている。
金一族で偽造パスポートと言えば、正恩氏の異母兄の正男氏が2002年に、ドミニカの偽造パスポートを使って日本のディズニーランドに行こうとして成田空港で逮捕され、大きな話題を呼んだことがあった。
ブラジル外務省は今回の件に関して、「事実関係を確認している」としている。一方、北朝鮮側もこの件に関する公式な声明は発表していない。