ドナルド・トランプ米国大統領は1日、鉄鋼とアルミニウムに、それぞれ25%、10%の関税を課すことを発表した。2日付ブラジル国内各紙が報じている。
同措置は世界規模での貿易戦争を呼び起こしかねず、特に昨年の米国鉄鋼輸入では世界第2位となる、シェア13%を誇るブラジルにも大きな影響を及ぼしそうだ。これは、「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ大統領がこれまでに行った政策の中で、ブラジルにとって最も強硬な策だ。米国は関税引き上げで、鉄鋼輸入を37%、アルミ輸入も13%削減する事を望んでいる。世界経済への悪影響を危惧し、1日のダウ・ジョーンズは1・68%下落した。
ブラジル通商産業開発省は1日、「ブラジル政府は米国が鉄鋼、アルミニウムに追加関税をかける意向との知らせを、『多大なる懸念』をもって受け止めた。ブラジル政府は、我が国と米国双方の生産者と消費者に大きな損失をもたらす可能性のある関税適用回避のため、米国と建設的に協力することを期待している」との声明を出した。
マルコス・ジョルジ、ブラジル通産開発相は2月27日に、ワシントンでウィルバー・ロス米国商務長官と会談した。同通産開発相は、「ブラジルが米国に輸出している鉄鋼製品の8割は、米国業界が原材料とする半製品」「ブラジルは米国産金属精製用石炭の最大輸入国」などと説き、ブラジルを関税対象国から除外するよう求めた。
通産開発省によると、ロス長官はポジティブな解決策を模索する意欲を示しつつ、「関税適用は関連諸国からの訴訟問題を招きうる」との見解も表明したという。
米国のシンクタンク、ピーターソン国際経済研究所のモニカ・デ・ベッレ氏は、この決定を「世界貿易を混乱させる可能性を持つ恐ろしいもの」と評した。
カナダとメキシコが米国と同じ北米自由貿易協定(Nafta)の一員である事で、過去に保護貿易政策の対象から外れた事があり、詳細発表は次週に持ち越されているが、中国や欧州連合(EU)は既に対抗措置をとる姿勢を見せており、他の諸国も追従する可能性が高い。
アメリカン大学(ワシントンDC)のブラジル人教授アルイジオ・カンポス氏は、「ブラジルの鉄鋼は米国の脅威になってなどいない。むしろその逆」と語り、ブラジルは関税対象国から外されるべきとの見方を示した。米国は関税引き上げを安全保障上、必要な措置と説明したが、同教授によると、米国で防衛部門に使われる鉄鋼は全体の3%だけで、どのような損害が国防に及ぶのかも具体的に示されていない。同教授は、この措置は世界貿易機関(WTO)に提訴されるだろうとしている。
カンポス教授は、今回の事態は1980年代に起きた貿易摩擦と同様の展開で推移すると見ている。当時の米国工業界は保護貿易政策実施を求める訴えを立て続けに出しており、米国政府が同国に輸出していた諸外国と交渉した結果、諸外国は「自発的に」対米輸出量を削減させたのだ。
ただし、同教授は、このシナリオの前に一旦、鉄鋼25%、アルミニウム10%の関税徴収が行われると見ている。