2月16日にリオ州治安部門の直接統治令を発令し、陸軍大将をリオ州執政官として派遣。新設した治安省にはジュングマン前国防相を配し、空席となった国防相もジョアキン・ルナ・エ・シウヴァ大将が代行するなど、「テメル政権(民主運動・MDB)は軍との結びつきが強すぎるのでは?」と、5日付ブラジル紙が指摘している。
テメル大統領は、16年5月に大統領代行の座に就任してからすぐ、安全保障局(GSI)を復活させ、局長に軍人のセルジオ・エチェゴイェン氏を就けた。同局長は閣僚級扱いとされ、それまでは文民統制だったブラジル情報庁(Abin)の指揮権も付与された。
その後も、従来は文民統制だったポストが軍人へ移される流れは止まらず、前述の各機関に加えて、国家治安局、国立インジオ保護財団(Funai)も軍関係者の手に渡った。
官房長官は政治家(文民)のエリゼウ・パジーリャ氏(MDB)が務めているが、官房庁スタッフの長は軍人のロベルト・ラモス氏だ。
テメル大統領は昨年10月に、長年の軍の求めに応じ、軍人が路上での作戦行動で人命を奪った場合は、通常の法廷で裁かずに軍事法廷で裁くよう変更する法案も裁可している。
ブラジル紙は、ジュングマン前国防相の後任に現役陸軍大将のジョアキン・シウヴァ氏が代行として就任したことを、「同省設立以来初めて、トップに軍人が就任」と強調して報じている。ブラジル紙はまた、大統領府に軍関係者が政府の要職に就いていることについて質問したが、「行政がより良いかたちで進むよう人選しているだけで、軍人か、文民かは関係ない」と返答した。
2月28日、現役から予備役へ移ったアントニオ・モウロン大将は「陸軍は政治に無関係ではない。軍も一定の限度を守りつつ、政治で役割を果たすべき。ただ、軍は政府にではなく、国家に仕えているので、党派色はない」と語った。
人権問題を専門で扱う国際的な非政府団体(NGO)、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(ニューヨーク本部)は、昨年11月11日に、リオ州サンゴンサロ市のサルゲイロ複合スラムで発生した8人の虐殺事件において、陸軍が、昨年制定された新法を盾に、検察や地元市警への協力を拒んでいることを問題視している。同NGOブラジル支部代表のマリア・カニネウ氏は、「私たちは同件が人権侵害にあたるのではと見ている」と語った。
リオ州治安部門への直接統治の責任機関でもある陸軍東方軍(CML)は、サルゲイロ複合スラムでの事件については既に、リオ州軍警内に調査機関(IPM―RJ)が発足したと答えた。