ロベルト・バローゾ最高裁判事が2月28日に、港湾事業契約に関する大統領令を巡る連警捜査のため、ミシェル・テメル大統領(民主運動・MDB)の銀行口座開示を許可した事が明らかになり、現職大統領の口座開示許可は初めてと6日付現地紙が報じた。
問題の港湾疑惑は、テメル大統領が17年5月に出した大統領令で恩恵を被ったとされるロドリマール社が、大統領の元側近に賄賂を払っていたとされる件で、昨年12月に最高裁が捜査開始を認めた。
連警は現在も、同疑惑に関与したとされる人物とその役割を特定するための捜査を行っている最中だ。同疑惑中の最大関心事は、テメル大統領が贈収賄や資金洗浄に関与していたか否かだ。
大統領令では、契約期間が25年から35年に延長され、最大70年まで更新可能である事と、1993年より前に事業契約を結んだ企業の契約更新を認める事が明記された。契約期間延長や93年以前の契約の更新容認は、大統領元側近のロドリゴ・ロッシャ・ロウレス下議(当時)が同令作成中に奔走した結果、盛り込まれたもので、93年以前に事業契約を請け負っていたロドリマール社も恩恵を被った。
だが、昨年5月のJBSショック後、同社の供述に基づいて5月18日に行われたパトモス作戦の際に連警が押収した書類や通話の盗聴記録などから、ロウレス氏がロドリマール社と接触していた事などが判明して、疑惑が浮上。JBSのリカルド・サウジ被告によるロウレス氏との会談時の盗聴も、ロドリマール社のリカルド・メスキッタ理事が会談に同席していた事を示していた。
港湾疑惑の捜査対象になっているのは、テメル大統領やロウレス氏、ロドリマール社のアントニオ・グレコ社主、メスキッタ理事などだ。
連邦検察庁のラケル・ドッジ長官は、捜査開始要請時から、ロドリマール社やその関係者に、14~16年にテメル大統領やMDBに対して行った選挙献金の内容も明らかにするよう要求。テメル大統領の口座情報の開示は、昨年末に要請が出ていたが、先週の捜査期間延長要請時に、連警の担当警部が改めて要請した結果、認められた。
バローゾ判事の決断を知ったテメル大統領は、事前に何の連絡もなかった事などを憤慨したとされているが、5日には大統領府報告官を通じ、やましい事は何もないと強調し、明細のコピーを提出する意向を示した。
テメル大統領に関しては2日にも、エジソン・ファキン最高裁判事が、MDB絡みのオデブレヒト社からの選挙献金疑惑で同大統領を捜査対象とする事を認めるという事態が起きたばかりだ。現職大統領を任期前の犯罪行為で起訴する事は憲法上、認められないが、起訴は出来なくても、捜査は可能なはずだし、報奨付供述で得た証拠などが無効化されたりする前に捜査を行いたいとの検察の言い分が認められた。