ホーム | 日系社会ニュース | 商議所シンポ=「今こそ攻めに転じるべし!」=大半の業界で回復基調にー=ドン底から成長軌道へ

商議所シンポ=「今こそ攻めに転じるべし!」=大半の業界で回復基調にー=ドン底から成長軌道へ

会員約200人が出席、注目の高さを伺わせた

会員約200人が出席、注目の高さを伺わせた

 「長年の景気後退から、ついに成長に転じた」――1日、市内ホテルで開催されたブラジル日本商工会議所(松永愛一郎会頭)主催の「2018年度上期業種別部会長シンポジウム―いま求められる新たな視点は―」で、松永会頭は昨年度の経済情勢をこう総括した。11部会による報告では、一部業種を除き総じて経済回復が現実化していることが示された上、「回復途上において打つべき戦略」が続々と語られた。ブラジル経済がどん底からようやく脱し、成長軌道に乗ったことを強く印象づけるシンポとなった。

 金融部会(安田篤部会長)は、各種マクロ経済指標から全体の経済動向を解説。世界経済の改善や国内の景気刺激策により、17年度のGDP成長率は1・1%増で、2年振りのプラス成長となる見込み。18年度は2~3%増と予測した。
 貿易部会(今井重利部会長)は、本格的貿易額に未だ達していないとしつつも、輸出入ともに拡大、17年度は640億ドルの貿易収支黒字を見込むと報告。穀物輸出量増とコモディティー価格高騰が輸出の牽引役となっていると分析した。
 また、対内直接投資が600億ドル台と順調に推移し、電気・ガス、運送業等のサービス業に中国の投資が集中していると指摘。一方で、日本は投資国別で17位と大幅に順位を下げ、日本の地盤沈下を警鐘。「本格的経済回復は19年で、その時点での進出では遅い。今がチャンス!」と呼びかけた。
 機械金属部会(池辺和博部会長)は、34カ月マイナスだった鉱工業生産が、17年2月からプラスに転じたと発表。自動車・家電関連生産が回復した一方、建設・機械関連は財政赤字による公共工事抑制や、ラヴァ・ジャット作戦により大手ゼネコンの体力低下により、依然厳しい状況にあると説明した。
 自動車部会(下村セルソ部会長)は、自動車販売台数は約248万台で5年振りの前年超え、本格的な経済回復に入ったと宣言。各社とも中南米輸出シフトにより、輸出は過去最大の76・2万台を記録。18年度の生産台数は13%増の約306万台と予測した。
 ブランドシェア別では欧米大手3社が盛り返し、トヨタ6位(8・7%)、ホンダ8位(6%)、日産10位(3・6%)に。メルコスールと各国間で進展するEPAの動きに危機感を示し、「締結すれば大きな影響が出る。日本とのEPA推進と競争力強化の早期実施をセットで行う必要がある」と提言した。
 その他、各部会報告では、事業領域や商品によって回復の速度と度合に違いはあれども経済回復の実感が語られる一方で、建築不動産部会(奥地正敏部会長)は、建築市場は4年連続マイナス、17年度はマイナス6・6%見込みで、「依然として不況から脱していない」と発表した。
 設備投資抑制による工事量減、また、小規模化により厳しい受注競争に晒されるなか、各社ではIOT技術を導入した施工管理システムや発電効率の高い風力発電事業への展開を検討するなどの意欲的な取組みについて紹介した。
 全体としては、10月大統領選挙の先行き不透明性に懸念が示されるも、回復途上の経済局面において、成長分野への積極的投資や日本の最先端技術導入等の戦略が示された。そのほか伯政府当局への許認可の迅速化や投資環境整備の働きかけ、日本とメルコスールのEPA締結など政策対応の重要性も浮き彫りとなったようだ。