世界銀行(本部は米国ワシントンDC・以下WB)は7日、「19~25歳のブラジル人青年の半数以上(ほぼ2500万人)が、良い条件の職に就く機会を失い、貧困に陥る可能性がある」とする報告書を発表したと、8日付ブラジル現地紙が報じた。
約2500万人というのは、勉強も仕事もしていない人や、学校には在籍しているが、留年などで勉強が遅れている人、仕事はしているが非正規雇用の人の総計だ。
教育学の勉強を続けるため、装飾小物作成の仕事をして学費を払っているデボラさん(21)。学費をためて、3年で休学した歯科学部に復学するために職を探しているメリッサさん(26)。ジャーナリズム学科に入るための学費融資が下りるのを待つ間、写真家のアルバイトをしているデニウソンさん(19)。法学部を止め、洋服店の販売員をしながら祖母の介護をするルアナさん(24)。こうしたケースはブラジルにあふれている。
WBのブラジル担当理事であるマーティン・ライザー氏は、「ブラジルの若者は今より更に弱体化し、就職難となる可能性があり、貧困に陥る危険度が増す」と語る。この状況は、若者の将来だけでなく、ブラジル経済の成長も危機に晒しかねないという。
ブラジルが成長し続けるには若年世代の力が不可欠で、彼らには、親の世代よりも高い生産性を身につける必要がある。
報告書作成責任者の一人である、WB経済分析員のリタ・アルメイダ氏も、「若者たちには競争力をつけるような質の高い教育が必要」と言う。今回の報告書のタイトルは、「『競争力』と『雇用』、若者支援政策の優先事項」だ。
報告書に記載されている対策案には、「若年妊娠を減らすためのプログラム」や「全ての青少年が高等学校まで終了する事を目的とした所得移転政策」「勉学を積むことで経済的な見返りを得ることが出来ることを理解させる」などがある。
アルメイダ氏は、昨年行われた高校課程の教育改革は、重要なポイントのいくつかを抑えてはいると評価。ただし、現行の社会政策は経験ある労働者の保護につながり、若年層への脅威になるという点はそのままだと見ている。最低賃金はその一例で、「最低賃金が高いほど、若者の雇用情勢に影響する。企業側は同じ賃金なら、経験のある労働者を選んでしまうから。このことは国際的にも証明されている」と同氏は続けた。
WB報告書は、若者の雇用促進のため、現行より低い最低賃金を制定することや、最低賃金の調整方法を見直すことの他に、労働省管轄の全国雇用システム(Sine)が行っている労働者仲介システム(IMO)の改良や、職業訓練計画の充実、失業保険の受給額を月を追うごとに減らしていくことなども提案している。