【既報関連】米国のトランプ大統領が、1日の予告通り、同国が輸入する鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課す事を8日に正式発表したと、8、9日付ブラジル各紙・サイトが報じた。
同措置は23日から発効となるが、北米自由貿易協定(Nafta)のカナダとメキシコは対象外となる。米国は関税引き上げの理由を、「鉄鋼製品輸入依存度が高まると、安全保障上の問題がある」と主張している。
ブラジルは咋年、総額80億ドル、1540万トンの鉄鋼を輸出した。ブラジル製鉄鋼を最も輸入しているのは米国で、ブラジルが輸出する全鉄鋼の32・7%を占める。
米国は昨年、総額291億ドル、3450万トンの鉄鋼を輸入した。輸入全体に占めるシェア1位はカナダの16・1%で、ブラジルは2位の13%だ。現時点で米国がブラジルの鉄鋼、アルミニウムに課している関税は、最大でも0・9%と2%。これらが25%、10%になると、10万人が雇用されているブラジル鉄鋼業界への影響は甚大だ。
ブラジル鉄鋼協会(IAB)は、「米国は自給出来ない国だから、この措置は、ブラジル国だけでなく、米国民にとっても大きな損失を生む」とし、全国工業連盟(CNI)も、「米国政府による違法な措置で、正当化される余地なし」と位置付けた。
ブラジル政府と鉄鋼業界は少なくとも四つの対抗措置を検討している。
一つ目は、世界貿易機関(WTO)に「米国の主張は高関税を課す正当な理由にならない」と提訴することだ。だが、提訴から結論が出るまでは数年かかる上、トランプ政権が決定を無視しかねないという問題がある。
二つ目は、米国の鉄鋼業界や国民に対し、米国政府の決定に反発するように求めることだ。トランプ大統領が署名した宣言書には、「米国工業界は、適切な量、又は品質の鉄鋼やアルミニウムが入手できない時は、見直しを求める事が出来る」と書かれている。
三つ目は欧州が示唆しているように、米国から輸入している別の製品の関税を、WTO規定上限まで引き上げることだ。欧州は既に、関税引き上げの対象となりうる米国産品100項目のリストを作成している。
四つ目は、ブラジルと米国の政府間交渉を通じて打開策を探ることだ。前述の宣言書には、「米国は、安全保障の面で関係を持ついかなる国とも、代替案について話し合う用意がある」と記されている。
米国ニューヨークを訪問中のエンリケ・メイレレス財相は、「米国は交渉に応じると言っているが、その交渉とは、どういうものか知りたいものだ。こんなやり方は米国産業にとっても良いものではない」と批判した。
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