スザノ市の高野山真言宗南米開教区金剛寺で住職を務めていた密祐快南米開教区総監(65、兵庫)が、離任挨拶のため5日、本紙を訪れた。
15年6月に赴任し、約3年間を当地で過ごした密総監。寺院の統廃合が進められるなか、昨年には開祖弘法大師(空海)のポ語伝記の出版など、現地化による伝道強化に力を注いだ。
昨年には弟子の永田祐尊(28)さんを高野山の修行に送り出した。僧侶資格を得るには4段階があり、その最終段階では「伝法灌頂」と呼ばれる儀式を本山で行う必要があるといい、永田さんは合格し、晴れて僧侶の身となった。
密総監によれば、年間およそ1800人が、加持祈祷のため、スザノ市の同寺を訪れるという。
「ブラジル人は明るい性格だが、深いところに悩みを抱えているのは日本人と同じ。人間的に違いはない」といい、「それを吐露できる相手は僧侶。他では語れないものを語ることによって楽になる」と真言仏教の存在意義の一つを語った。
最後に「ブラジルは活気溢れる国。未来の大国と言われるが、この国はきっと良くなる」と期待を滲ませた。
なお、弘法大師のポ語伝記は50レアルで販売中。問合せは、同宗各寺まで。
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金剛寺の永田祐尊さんによれば「修行は想像以上に厳しいものだった」という。密総監は「修行には中国人も多くきており、『監督官がいないと彼らはすぐサボる』と言って、永田さんが怒って帰ってきた」と笑う。「彼は非常に真面目で、ブラジル日系人代表として誇りを持っている」と賞賛した。今後の伝道強化については「ポ語ができないと値打ちは半分。これからはポ語が必要な時代だ」と語り、「若い日系僧侶が出てきて、非常に頼もしい」と目を細めていた。