世界的な動画サービス「ネットフリックス」が23日から配信をはじめた、ブラジル製作のオリジナル・ドラマ「オ・メカニズモ」の内容を巡り、政界や一般視聴者を巻き込んで大きな物議をかもしている。
この「オ・メカニズモ」は架空の世界を扱ったドラマになってはいるが、話の内容は労働者党政権時代の2014年に捜査がはじまった、ブラジル最大の政治スキャンダル「ラヴァ・ジャット作戦」を舞台にしたものであることが明らかだ。
それは劇中に登場する諸々の名称からも明らかだ。同作戦で汚職の舞台となった石油公社ペトロブラスは「ペトロブラジル」、同公社の事業を請け負い、政治家に巨額の賄賂を支払ったゼネコン企業オデブレヒトは「ミラー&ブレヒト」、同じくOAS社は「OSA」となっている。
また、登場人物も、女性大統領ジャネッテは明らかにジウマ前大統領であり、その師匠の前大統領「イジーノ」氏がルーラ元大統領。ジャネッテと対立する野党の政治リーダー、ルシオ・レメス上院議員は14年大統領選でジウマ氏と大統領の座を争ったアエシオ・ネーヴェス氏、副大統領のテメス氏は、前副大統領で現大統領のテメル氏。また、ラヴァ・ジャットを裁く判事パウロ・リゴ判事は、明らかに、パラナ州連邦地裁のセルジオ・モロ判事がモデルになっている。
ブラジルでは昨年、ラヴァ・ジャットを題材にした映画「ポリシア・フェデラル―ア・レイ・エ・パラ・トドス(連邦警察―法律は全ての人のために)」が公開され、大ヒットしているが、実在の政治家の登場人物が大幅に制限されたものだったことで物足りなさを指摘されていた。
また同映画は、監督も出演者も知名度が低かった。それは、ブラジル芸能界に労働者党シンパが多く、製作協力が得られなかったためだが、この「オ・メカニズモ」は監督が国際的にも注目された大ヒット映画「エリート・スクワッド」のジョゼ・パジーリャ監督で、主演は国内トップクラスの人気俳優セルトン・メロがつとめていることでも注目されている。
だが、それだけに、この内容を巡り、労働者党が怒り心頭。同党支持者たちも「デタラメだ」としてボイコット運動を起こす騒ぎに発展している。
16年8月に罷免で大統領の座を追われたジウマ氏は「ジャネッテはこの私だ」といい、「ここで描かれていることは全てデタラメだ」と抗議している。
ジウマ氏は特に、ルーラ元大統領をモデルにしたイジーノ氏が「最高裁さえ味方につければ良いんだ」と語ったセリフを問題視している。
ラヴァ・ジャット作戦は今日まで4年継続中の作戦であり、もし、このドラマがヒットすれば長期化するだけの題材は十分にあるが、ブラジル国民の反応やいかに。(26日付フォーリャ紙サイトなどより)
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