23~25日にサンパウロ市インテルラゴス・サーキットで行なわれたロック・フェスティバル、「ロラパルーザ」は開催7年目の今年、遂に動員30万人に達する大盛況となった。同サーキットの収容人数の限界が10万人なので、3日間ともチケットを売り切ったことになる▼このロラパルーザ(以下ロラ)は90年代にアメリカではじまったフェスティバルで、今や同国でも屈指の名物フェスティバルだが、2011年にチリに進出したのを皮切りに、12年ブラジル、14年アルゼンチンと「南米版」が定着している▼今はドイツ版、フランス版と拡大しているロラだが、現在、本国以外のもので世界的に最も話題にされやすいのが南米版、とりわけブラジルだ。今や知名度でも、リオでの「ロック・イン・リオ」もしのぐ勢いとなっている▼なぜ、そのような事が起きるのか。それはサンパウロ版ロラに集まる観客の異様な熱狂振りゆえだ。ロラはテレビでも生中継されるイベントのためネット上でも動画があがりやすく「ユーチューブ」などでの視聴も頻繁に行なわれるのだが、世界の音楽ファンは一様にサンパウロ市の音楽ファンのアーティストに対する熱狂的な反応にかなり驚いているとしばし聞く▼アーティストがステージに登場するや耳をつんざくような「ギャッー!」という声が方々で上がり、曲がはじまれば、どんな曲でも歌詞を一字一句大合唱。あとはアーティストによって「オーレ、オーレ!」だの「チ・アモ!」だの、掛け声も何でもありだ。コラム子もロラははじまった年から毎年行っているが、初来伯のアーティストがこの歓声に対して涙を流さんばかりに声を詰まらせて感動したり、反応の過剰ぶりに笑いを抑えられなくなったり、予想外の大合唱に目を大きく丸めて「おい、嘘だろ?」という表情を浮かべた姿を何度も見てきている▼そうしたブラジルのファンの熱狂振りを気に入っているアーティストも少なくないが、その代表が、今年の2日目のトリを飾ったアメリカの大物バンド、パール・ジャムだ。同バンドは日本には2004年以来行っていないが、ブラジルには2010年代だけで4回来伯。来るたびにブラジルのマスコミをにぎわすが、今年のロラの売り切れにも貢献している▼今回のパール・ジャムもサービス満点で、他の公演場所ではまず演奏されない貴重な曲を演奏するは、他の出演者を飛び入りで共演させるはの、スペシャル演出を連発。遂にはヴォーカルのエディ・ヴェダーがポルトガル語で「サンパウロは世界のロックの首都だ」とまで叫んだほどだった▼そして、もうひとつの例が3日目の話題をさらった米国女性歌手のラナ・デル・レイだ。「ミステリアスで魔性の魅力を持つ美女」というのは一見南米っぽいものではないが、理由はわからないがこれがブラジル人にはめっぽう受けが良く、2012年のデビュー当時からかなりの人気がある。待望のロラ初登場となった今年は、ステージの前で何時間も前から張り付く人続出で、いざ本番がはじまると、日本、アメリカ、イギリスでコンサート体験のあるコラム子でさえこれまで聞いたことのないような、最大規模のすさまじい反応でファンは熱烈歓迎した▼普段クールで感情を表向きには出さないことで知られるラナだったが、よほど嬉しかったのか、その翌日、自身のフェイスブックでこの公演の動画を紹介し「これから機嫌が悪いときは、このサンパウロでのコンサートを思い出すようにするわ」とコメントして注目を集めたほどだった。(陽)