ブラジル連邦議会は3日に上下両院合同本会議を開き、ミシェル・テメル大統領が今年1月に拒否権を行使した項目を復活させる決定を下したと、3、4日付現地紙・サイトが報じた。
「大統領による拒否権行使を議会が拒否した」ことで復活することになったのは、中小、零細企業対象の滞納税回収計画(Refis)や、農業労働者支援ファンド(Funrural)の滞納金回収に関連する措置などだ。
これらの法案には、社会保障制度改革成立のための交換条件として、企業や農家にとって都合の良い項目が盛り込まれていたが、テメル大統領はそれらの項目に拒否権を行使していた。
しかし、3日は、大統領が拒否権を行使した項目が全て復活した。具体例を挙げると、Funrural関連では、返済の遅れによって生じた罰金や未納額にかかる利息の減額率が25%から100%に引き上げられる。社会保障費の積立金も、給与の2・5%が1・7%に下がる。
Refisでは、滞納税の支払いを180回まで分割できる措置や、滞納分の金利は90%、罰金は70%、未納額にかかる利息は全額免除にする措置などが復活する。
政府の経済政策班は議会の動きに抵抗していたが、これらの措置が復活したことで、今年度の連邦税は100億レの減収となり、財務局も30億レの減収となる(計130億レアルの損失発生)と見積もっている。
両院合同本会議前、エウニシオ・オリヴェイラ上院議長(MDB)は、「私が上院議長である間は、上院で審議する内容に他者の口は挟ませない」と語っていた。
テメル大統領は、1月に一部のRefis関連措置を拒否した時、当面は新たな滞納税回収計画がなく、予算確保のために拒否権行使が必要だったとした上で、中小零細企業にとっても悪くない、解決策を見つけたと述べた。
政府は拒否項目の一部復活で済むよう交渉する意向だったが、議会は全ての項目を復活させた。議会による拒否権拒否の後、テメル大統領は「中小零細企業は雇用の創出などに貢献している」とし、復活を容認した。
しかし、政府経済政策班には不満がくすぶっており、政府が税収減を補う代替案を出すまで、連邦会計検査院(TCU)が今回の決定を差し止めることを望んでいる。
他方、議会採決により結果的に利益を得た格好となった農林族議員たちは驚きの色を隠さなかった。農牧畜系議員グループの会長を務めるテレーザ・クリスチーナ上議(民主党・DEM)は、「どうしてこうなったのか、私だって知りたい。エウニシオ議長の意向が完全に通った」と語っている。