リオ市北部サンクリストヴァン地区にあるサンクリストヴァン宮殿は、19世紀にブラジル皇室が暮らした場所で、窓からの視界には、広大なキンタ・ダ・ボア・ヴィスタ公園が広がる。
国立自然史博物館(リオ州連邦大学所属)となっている同宮殿の内部は、より一層荘厳な空気を現代に伝えているが、よく見ると、何年も修復されていない家具は傷み、壁には〃しみ〃が浮かんでいる。
この古びた宮殿の部屋で、人類学者のアレックス・ケルネル氏は働いている。
ケルネル氏は、この宮殿が危機に瀕していることや、博物館には大変価値のある所蔵品があることに世間の目を向けさせようとして、保存状態も悪く、決して使いやすいとはいえない元「皇帝の間」をオフィスにした。
ケルネル氏は、「ここは本来、偉大で、大変価値のある場所。ここの所蔵品も絶対に守られないといけないのに問題が山積みだ」と腕を広げ語る。
1818年にリオ市セントロのカンポ・デ・サンターナ公園内に王立博物館として開設され、1892年に現在の場所に移転した、この国立自然史博物館は、ブラジルで最も古い科学機関で、今年6月に開館200周年を迎える。
ラテンアメリカでも屈指の重要度を持つ自然史資料を保管する国立自然史博物館だが、開館200周年のことは忘れ去られている。
雨漏りがし、壁にできた〃ひび〃からは水も漏れ、荘厳な内装だったはずの部屋も空っぽ。年間入館者数は20万人に満たない。その歴史の偉大さ、保存資料や建物そのものの価値からすれば、微々たるたるものだ。
同館館長に就任したケルネル氏はこの惨状を変えようとの意気込みに燃えている。
同氏は民間企業に協賛を働きかけるとともに、連邦政府にも、ブラジル史の重要な舞台となったサンクリストヴァン宮殿を修繕しないでどうするのかと訴えている。
博物館所属の職員や研究者の意欲を高めるため、新しい研究施設で研究させたいとも願っている。
ケルネル氏は誰よりも、国立自然史博物館の所蔵品のもつ価値や潜在力を信じており、博物館復活プロジェクトを成功させ、年間入館者数を100万人に引き上げるという夢を持っている。
恐竜の標本や博物館の所蔵する貴重なミイラに囲まれ、古い歴史を生きた先人たちに思いを馳せながら、ケルネル氏は博物館復活に並々ならぬ熱意を傾けている。(13日付エスタード紙より)